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伊予市誌

4 昆虫

 谷上山の植物相は極めて単純な地域がその大部分をしめているため、昆虫類の生息地としてはあまり好ましい所ではないらしい。したがって一般に平凡な昆虫相を示し特筆すべき種類は発見されていない。一方では松山市付近ではかなり珍しいと思われるウスタビガ・ルイスナガゴミムシ・ヤホシゴミムシなども見られていた。しかし、以下の記録も含め、現在では環境の変化などによりかなりの移り変わりがあるものと思われる。

 〔山麓地帯について〕
 谷上山の表登山口付近には、わずかに雑木林が残されていて、早春よりコツバメ・ミヤマセセリなどが見られ、これらとともに春だけしか出現しないツマキチョウ・ビロウドツリアブ・ソロスジヒゲナガバチなどの姿や、松の梢ではハルゼミの鳴声もよくきかれる。冬の永い眠りからさめた越年組のムラサキシジミ・ウラギンシジミ・キチョウ・ツマグロキチョウ・アカタテハ・ヒオドシチョウ・ルリタテハなどの姿が時々見られる。
 また、アラカシやその他の雑木林には甲虫類も多く、ヒメアカボシテントウ・ベニヘリテントウ・ナナホシテントウ・キイロテントウ・カシワクチブトゾウムシ・ムツボシサルハムシなどが採集されている。

 〔宝珠寺及び山頂付近について〕
 山頂付近ではアゲハ・キアゲハ・クロアゲハ・ツマグロヒョウモン・ルリタテハ・アカタテハ・クマバチ・オニヤンマなど大型の昆虫類の飛来する姿をよく観察することができる。山頂から宝珠寺付近一帯は植物の種類も豊富で、多くの昆虫類が見られ、アサギマダラ・カラスアゲハ・アオスジアゲハ・ミドリヒョウモン・メスグロヒョウモン・コミスジ・イシガケチョウなど美しいチョウの仲間やウバタマムシ・クワガワムシ・カナブン・シロテンハナムグリ・コアオハナムグリ・センチコガネ・ウバタマコメツキ・ハンミョウ・ジョウカイボン・キマワリ・キイロトラカミキリ・ゴマダラカミキリ・ノコギリカミキリなど普通の甲虫類も見られる。九~一〇月にかけて宝珠寺付近にはウラギンシジミが多産し、アラカシの林や路上に群れている姿がよく観察される。一一月ごろには珍しいウスタビガなどもとれ、また秋から冬にかけては越年しているスジアオゴミムシ・アトボシアゴミムシ・フタホシスジバネゴミムシ・ヒメオサムシなど美しいゴミムシの仲間や形の面白いマイマイカブもよく見られ、時に珍しいルイスナガゴミムシ・ヤホシゴミムシも採集することができる。

 〔帰化昆虫について〕
 輸入農産物や果樹苗に付着して侵入し、当地の農作物に拡散していった害虫は少なくない。イセリアカイガラはアメリカから明治時代に侵入帰化したが、天敵昆虫の輸入や農薬の散布によってほぼ制圧されている。しかし、柑橘類など広はんな植物に寄生することや、放棄果樹園がふえることにより再び大発生する可能性は考えられる。また施設園芸の隆盛に伴い、授粉媒介のために導入されたマルハナバチなどが、逸出して生態系を乱すことを憂慮する声もある。
 近年環境の変化によって秋の虫の声を聞くことも困難になりつつあるが、代わって街路樹や庭木のやや高い場所から、にぎやかなアオマツムシの声が聞こえるようになった。新しい帰化昆虫で、国道など幹線道路沿いに急速に広がっている。