3　市制・町村制の公布と地方自治制の確立

　市制・町村制の公布　一八八八（明治二一）年四月二五日法律第一号をもって、市制・町村制が公布せられ、愛媛県では市制・町村制を一八八九（明治二二）年一二月五日から県下に実施することにし、県令達第六二号をもって管下にこれを公示したが、その前提として自治体の統合を先決として、各郡役所を通じてこれが勧奨に着手した。そして「町村合併標準」（明治二一年六月一三日内務省訓令第三五二号）によって適当な行政措置がとられた。この合併処分について「町村制ノ改革ヲ決行スルニ当タッテ最重要ナル事業ハ、有力ノ町村ヲ造成スルニ在ルモノトス、ソモソモ有力ノ町村タランニハ、相当ノ区域及ビ人口ナカルベカラズ。（後略）」と述べ、次に標準として、各町村はおおよそ三〇〇戸以上を常例とすること、合併の町村には更に新規の名称をつけること、例えば大町村に小町村を合併するときは、その大町村の名称を新町村の名称とすることなど細かく規定された。
　同時に発表された郡の分合標準にはおおよそ人口五万を以て一郡とし、市の標準は人口二万五、〇〇〇以上で市街を形成している地域とした。
　一八八九（明治二二）年一一月に久米郡・下浮穴郡・伊予郡・喜多郡の境界を定めることがあって、下浮穴郡の鵜崎・両沢・上唐川の三村を伊予郡に編入し、同年一二月の町村制実施で、伊予郡を一町九村（郡中町・南山崎村・北山崎村・郡中村・南伊予村・北伊予村・岡田村・松前村・垣生村・余土村）とした。伊予市に関係するものを掲げると次のとおりである。

　地方自治制の確立の推移
　一八七八（明治一一）年の郡区町村編成法施行から、一八九〇（明治二三）年の市町村制実施までの間における地方自治制の確立の推移を、各町村別に見ると次のとおりである。

　郡中町
　一八七八（明治一一）年に従来の大小区制を廃して郡町村となり、郡役所を湊町の第一五大区役場に置き、湊町と灘町を分離した。
　一八八五（明治一八）年に戸長役場改正があって、灘町・米湊村・上吾川村を合して一戸長役場となり、灘町に役場を置き、湊町・下吾川村・下三谷村をあわせて戸長役場を湊町に置いた。
　一八九〇（明治二三）年市町村制実施によって、灘町・湊町・下吾川の一部をもって郡中町となり、灘町に町役場を置いた。「郡中」という名称は、一八一七（文化一四）年四月に替地一帯を「郡中」と称し、郡奉行出張所を米湊役所と呼ぶように藩主から布告された。これで郡中と呼ぶようになった。

　郡中村
　一八九〇（明治二三）年の市町村制実施によって、米湊村・上吾川村・下吾川村をもって郡中村となり、上吾川松本に村役場を置いた。

　南伊予村
　一八七八（明治一一）年大小区制廃止によって、八倉・宮下の二か村と上野村・上三谷村・下三谷村の三か村は別個に戸長役場を置いた。
　一八八五（明治一八）年戸長役場の改正で、八倉村・宮下村・上野村・上三谷村の四か村は連合して、上野村ほか三か村戸長役場を置いた。下三谷村は下吾川村・湊町と連合して湊町ほか二か村戸長役場を湊町に置いた。
　一八九〇（明治二三）年市町村制実施によって、八倉村・宮下村・上野村・上三谷村・下三谷村の五か村を合併し南伊予村となって村役場を上野に置いた。

　北山崎村
　一八七八（明治一一）年大小区制廃止で、三島町・尾崎村・本郡村・森村・三秋村・中村・市場村・稲荷村にそれぞれ戸長役場を置いた。
　一八八五（明治一八）年戸長役場改正で、上記一町七か村を連合して、三島町ほか七か村戸長役場を三島に置いた。
　一八九〇（明治二三）年市町村制実施に伴い、これらは合併して北山崎村となり、村役場を三島に置いた。

　南山崎村
　一八七八（明治一一）年大小区制廃止によって、上唐川村・両沢村・鵜崎村の三か村は別個に戸長役場を置き、下浮穴郡に属した。
　一八八五（明治一八）年戸長役場改正で、大平村・上唐川村・両沢村・下唐川村・鵜崎村の五か村は連合して大平村ほか四か村戸長役場を大平に置いた。
　一八九〇（明治二三）年市町村制実施によって、上記五加村は合併して、南山崎村となり、村役場を大平の石原に置いた。
　一八九六（明治二九）年四月一八日にまた大きな変革が行われて、下浮穴郡のうち八か村（原町村・砥部村・広田村・出渕村・中山村・佐礼谷村・上灘村・下灘村）が伊予郡となった。
　翌一八九七（明治三〇）年四月には、伊予郡の垣生村・余土村が温泉郡に入ったので、伊予郡は一町一五村となって、下浮穴郡が解消した。
　一八九七（明治三〇）年四月以後の変動は次のようである。
　一九二五（大正一四）年四月に上灘町の一部を南山崎村に編入した。
　一九三八（昭和一三）年一一月に松前町と郡中村との境界を改めた。
　一九四〇（昭和一五）年一月、それまで多年の宿案であった郡中町と郡中村の合併が実現して、新しい郡中町が発足した。