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伊予市誌

2 伊予市上水道の誕生

 森川水源の開発
 森上山簡易水道は一九五〇(昭和二五)年に建設したが、この水源は年々鉄分の量を増し、三・五PPMにまで達し、完全ろ過ができない状態にあったので、再び地盤変動対策事業で新しく森川下流に水源地を求めることになった。取水方法は川床を掘って取水埋管(有孔ヒューム管内径五〇〇ミリメートル、延長二〇メートル)を布設し、取水井戸から揚水して送水管六〇〇メートルを新設した。

 伊予市上水道事業創設
 伊予市内に分散する水源地の内、本郡浜・尾崎浜の両水源は冬期になると枯渇し、給水量の確保が十分でなく、また郡中町簡易水道の新川水源は水質が悪く除鉄ろ過等の施設維持に困っていたので、森川に新水源(森上山簡易水道水源に使用しているもの)を求めた。また、分散施設を整備統合して伊予市上水道事業を創設した。この事業の概要は次のとおりである。

  ① 事業の認可と工期 昭和三一年八月一六日に事業の認可があり、翌三二年一二月から工事に着手して同三四年二月に完了した。
  ② 事業費 総事業費は三、二八八万円で起債額は二六〇万円、その他は六八八万円。
  ③ 給水区域 森・本郡・尾崎・三島・米湊・灘町・湊町・下吾川の八地区。
  ④ 給水計画 計画給水人口は一万五、〇〇〇人、一日一人平均給水量は一二リットル、一日一人最大給水量は一八〇リットル、一日最大給水量は二、七〇〇立方メートル。
  ⑤ 浄水方法と給水方法 森川の川床から取水埋管で伏流水を取水し、塩素滅菌を施して送水ポンプで三島配水塔に貯留をし、給水区域の家庭へ自然流下で給水を実施する。
  ⑥ 主な施設 送水ポンプ施設・塩素滅菌施設・三島配水塔(有効容量五〇〇立方メートル)・森水源地と三島配水塔の各管理室・送配水管等。

 上水道第一次拡張事業
 水源地が森川の下流にあるため、上流部落の汚水などから汚染されるおそれがあるためと防疫対策の万全を期するために森水源地に緩速ろ過施設を設けることになった。
 一九六二(昭和三七)年三月一〇日に事業認可があり、総事業費二、○三五万一、〇〇〇円をもって同年七月に着工し、一九六三(昭和三八)年三月に工事は完丁した。

 上水道第二次拡張事業
 これは上野の高瀬に開発することになったものである。
 一九六七(昭和四二)年の夏は大干ばつに見舞われて、農家の被害は甚大であった。特にみかんの耕作者はガソリン用ドラムかんなどで灌水用の水を求めて遠くの平野まで毎日ほん走したほどであった。その秋は三~六割の減収をみた。もちろん森川の流水も枯渇状態が長く続き、六月一四日から一五日間、更に八月二四日から四二日間、延べ五七日間上水道は朝夕二回の時間給水となった。それでもなお、水圧が弱くて時間給水もできない地区へは、自衛隊と市役所の男子職員で編成した給水班が、各家庭の給水活動を行って市民生活を守った。
 この断水は干ばつが原因ではあったが、一方施設面からみても一九五八(昭和三三)年の建設当時から市民生活の向上に伴う使用水量の増大で、施設の能力も頂点に達した。こうした断水をくり返さないように、水量豊富で清浄な水を求めるため、関係者の懸命な努力と上野部落の理解によって伊予市上野高瀬の農業用水井戸を利用した高瀬水源の開発をした。
 この水源は水量が豊富で安定した給水能力をもった市民待望の水源であり、今後の伊予市の上水道は森水源と高瀬水源から給水することになった。
 これによって、給水区域は拡張され、上三谷・下三谷・下三谷原の三簡易水道を上水道に編入して、上三谷・下三谷並びに上吾川の一部を新しく給水区域に加えた。給水区域内の人口も一万九、五六二人、計画給水人口は一万七、〇〇〇人、一日一人平均給水量は二四七リットル、一日一人最大給水量は三三五リットル、一日最大給水量は五、七〇○立方メートルとなった。
 この事業には総事業費として五、九四一万円を投入した。工事は、一九六九(昭和四四)年七月に着工して一九七〇(昭和四五)年一二月に竣工した。

 上水道第三次拡張事業
 昭和四六年度になって生活の高度化に伴い市内未給水地区の上水道設置要望が強まり、給水区域の拡張を行うことになった。すなわち、稲荷・市場・中村・下大平地区並びに上吾川の一部が新たに給水区域に加わった。給水区域内の人口も二万二、三二〇人、給水人口は二万人となった。今回の新規給水区域は市内の高台地区であるため、三島配水塔に送水ポンプを設け稲荷神社裏の配水池に貯留して、自然流下で新給水区域に給水を行うことにした。このとき、三島配水塔内受水槽(有効容量七五立方メートル)・送水ポンプ施設・稲荷配水池(有効容量四二五立方メートル)・送配水管等の施設をした。この事業費は総額三、九七五万四、〇〇〇円要した。

 上水道第四次拡張事業
 一九七三(昭和四八)年に計画した大谷水源は、農業用水の余水利用について関係者と協議を重ねたが、諸事情により断念中止した。

 上水道第五次拡張事業
 昭和四九年度給水実績一日最大給水量八、二四四立方メートルに対し、施設能力一日当たり六、七〇〇立方メートルで水源能力を超過している現状であり、その上、昭和五三年度下吾川鳥ノ木地区に公営住宅・県住宅供給公社による分譲住宅など約六八四戸・厚生年金休暇センターなどの建設が予定され、緊急に拡張整備が必要となった。市内各地で水源予定地を探索し、八倉地区に元農業用水の泉があり、電気探査と揚水試験の結果、水量も豊富で安定した取水が可能であることがわかった。そこで八倉部落の人々の理解と協力を得て、八倉水源の開発をした。
 一九七八(昭和五三)年三月一〇日工事に着手、同年一一月八日完成した。日量五、〇〇〇立方メートルを取水、工事内容として、揚水ポンプ施設・送配水管施設と八倉古屋敷に配水池(有効容量一、七〇〇立方メートル)に貯留して、自然流下で給水を行うことにした。
 計画給水人口二万六、〇〇〇人、一日一人平均給水量四五〇リットル、一日最大給水量一万一、七〇〇立方メートルとなった。この事業には総額四億六〇〇万円を投入した。
 以上の森・高瀬・八倉水源で、伊予市民に一定の生活用水の安定供給を図っている。

 上水道第六次拡張事業
 近年の住宅政策による人口の増加、下水道の整備などに伴う生活水準の向上あるいは都市化の進展、産業の発展、企業誘致などによる水需要は年々増大しており、この抜本的な対策として、山鳥坂ダムから中予分水の供給事業により、計画給水人口三万一、三〇〇人、計画一日最大給水量一万一、七〇〇立方メートルから一万九、〇〇〇立方メートルに増量した拡張事業の認可を一九九四(平成六)年三月三一日に受け、平成六~一七年度の一二年間とし、総事業費五七億七、〇〇〇万円とした。
 この財源を確保するために水道料金を一九九四(平成六)年四月に七二%の値上げを行った後に、一〇〇年に一度と言われる異常渇水に見舞われ、七月二〇日から一一三間(断水期間)の時間給水を止むなく実施した。しかし、中予分水事業が二〇〇一(平成一三)年一一月に中止となり、中予広域水道用水の受水(九、〇〇〇立方メートル)を計画に含めていたため、二〇〇三(平成一五)年三月に変更認可申請を行って、受水部分を除外するとともに森水源地のクリプトスポリジウム汚染の対策を講じるために浄水方法を変更した(濁度除去、クリプトスポリジウム、ウイルス等の除去が完全に行え、清浄で安全な水を住民に供給することができ、森水源地の浄水処理能力は二、八OO立方メートルとなる)。
 全体での計画一日最大給水量は、四か所の水源で一万七、三〇〇立方メートルに変更し、工期を二年延長して平成一九年度とし、総事業費も四八億円に変更した。
 主な第六次拡張事業の工事内容は、次のとおりである。
 (一)高瀬水源地の施設整備(取水能力四、〇〇〇立方メートル→六、五〇〇立方メートルに増量、遊離炭素除去のためエアレーション設備の設置)
 (二)森水源地の施設整備(浅井戸の新設、急速ろ過機の設置、膜ろ過設備の設置)
 (三)宮下水源地の新設(取水能力三〇〇立方メートル)
 (四)安定給水のため配水池築造及びポンプ場の新設
  ◎ 配水池の築造(大平配水池・容量三一〇立方メートル)、(森配水池・容量一、〇〇〇立方メートル)、(稲荷配水池一池・容量五七五立方メートル)、(上吾川配水池二池・容量二、三〇〇立方メートル)、(上野配水池・容量四四〇立方メートル)
  ◎ ポンプ場の新設(大平ポンプ場・小手谷ポンプ場・三秋ポンプ場・三島ポンプ場・下三谷原ポンプ場・上三谷原ポンプ場・上野ポンプ場)
 (五)給水区域の拡大を図るため送配水管の整備(最大口径は四〇〇ミリメートル)
 八倉・宮下・上野・上大平・三秋・唐川地区を給水区域に含めた計画であり、鵜崎・両沢の一部を除く、市内全域を給水区域とし、未給水地区の解消及び簡易水道の統合を図った。伊予市上水道の給水実績を示すと第71表のとおりである。

 上水道の課題
 水道は、日々の市民生活はもちろん、産業経済活動に欠かすことのできない基盤施設であり、特に一九九四(平成六)年の大渇水と、それに続く一九九五(平成七)年の阪神・淡路大震災を契機に、ライフラインとしての重要性が改めて認識されている。加えて、多様・高度化する需要者ニーズに応え、豊かさを実感できる社会を実現するため、高水準の水道設備を構築することが急務となっている。
 また、伊予市は水源に恵まれないため二〇〇二(平成一四)年にも渇水に見舞われ、市民の節水協力や施設整備を進めた結果により、止むなく減圧給水を実施したが、断水の事態には至らなかった。新たな水源の確保に苦慮しており、安定水源が確保されるまでのつなぎ水源(予備水源)の開発に加え、漏水防止対策の推進による水資源の有効活用や、節水グッズ(バスポンプ・節水型洗濯機の購入・シングルレバー水栓への改造など)を補助対象として節水対策で需要抑制策に取り組み、その上に水源開発を行って、安定給水の確保などに懸命の努力をしなければならない。
 しかし、これらの事業には多額の投資を必要とし、第六次拡張工事費の借入金に伴う元利償還が増大しており、節水を推奨する中で水道事業財政は極めて厳しい状況になる。
 このような実情を踏まえて、水道サービスを低下させることなく今後とも水道事業を健全に経営していくため、諸問題について検討を重ねていくことが今後の課題である。

第71表 伊予市上水道給水実績

第71表 伊予市上水道給水実績