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中山町誌

二、 泉源開発

 (一) 中山鉱泉
 中山鉱泉に関しては、「中山町誌」(昭和四〇年刊行)に昭和三七年頃までの様子が記述されている。その後昭和四〇年に、この源源について中山町が開発を企画し、愛媛大学地域社会総合研究所の調査研究や、ボーリングによる調査が行われた。
 中山鉱泉の源泉は町の中心部、現在の中山町庁舎の近くの中山川河床で見られる。河床・河岸の露頭は三波川結晶片岩類の緑色片岩からなっており、ほぼ北北西方向の断層が走っている。
 源泉は、これら断層破砕帯から炭酸ガス(二酸化炭素)を伴って自噴している。現在も、付近は含鉄溶液の酸化による褐鉄鉱によって赤褐色に汚染され、また、中山川の河床中から、数ケ所にわたって、絶えず炭酸ガス(二酸化炭素)の気泡が発生している。
 開発は、昭和四〇年に、広島の水利工業により、一一〇メートルのボーリング調査が行われ、その泉質は昭和四〇年一〇月に愛媛大学で分析された。それによると、泉温摂氏一九度、源泉の外観は無色透明で、かん味及び炭酸の刺激味を帯び、汲み置きすると淡灰黄色の沈殿が生じる。また、水素イオン濃度(PH値)は六・二六と弱酸性を呈するほか、次表のような分析結果が報告されており、リチウム・重炭酸ナトリウム・アルカリ土類及びメタ珪酸を含む「含炭酸食塩泉」と認めている。
 しかし、自噴量がなく、地下一一〇メートルからのエアリフト試験揚水で、毎分二一四リットルと非常に少ないため、開発が見送られた。

 (二) 安別当鉱泉
 町内佐礼谷地域には、安別当部落の大たちに「薬師の湯」として利用されている鉱泉がある。源泉は安別当の標高四九〇メートルの谷間の地点である。付近の地質は、三波川結晶片岩類の緑色片岩が基盤で、近くには火成岩の貫入岩体が見られる。
 昭和四八年に、地下五五〇メートルまでボーリング調査が行われ、昭和四九年には、愛媛県立衛生研究所による鉱泉の分析も行われた。掘さく深度三〇〇メートルにおける自噴量は毎分一一一リットル、泉温摂氏二三・四度、源泉の外観は無色透明で硫化水素臭がある。また、水素イオン濃度(PH値)は八・一〇と弱アルカリ性を示す他、分析結果は次表のようになっている。さらに、佐礼谷中学校科学部の調査で、硫化水素は、一リットル中一・二九ミリグラムと高い濃度を示している。これらの結果から、安別当鉱泉は「弱アルカリ性単純硫黄泉」と考えられる。
 今も自然に湧出しているが、現在のところ開発計画は考えられていない。

図4-5 中山鉱泉付近地質図

図4-5 中山鉱泉付近地質図


表4-3 中山鉱泉の分析表

表4-3 中山鉱泉の分析表


図4-6 安別当薬師寺鉱泉付近の地質略図

図4-6 安別当薬師寺鉱泉付近の地質略図


表4-4 安別当薬師鉱泉の分析表

表4-4 安別当薬師鉱泉の分析表