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中山町誌

二、 郷土行政区画機構の変遷

 大正以来、国家の戦争というあわただしい推移の中にあって、郷土の行政も目的貫徹の一翼を担って、ただ中央集権的政治に追従していくより道はなかった。
 この間において、大正七年には日本国最初の平民内閣といわれる原政党内閣が成立し、長年にわたり地方財政を圧迫してきた義務教育費を中央政府と市町村とで分担する制度が設けられた。
 郡は、プロシアの制度にならった「郡制」の発布(明治二三年)により新たに自治体として設定された行政単位であった。しかし郡には課税権が与えられていなかった。郡はその事業内容や財源関係からみて団体自体の発達に基づく自治体としてよりも、むしろ府県と町村との間に中間団体として挿入された人為的な団体としての地位と機能を持ち続けてきた。しかし、町村に対する国からの委任事務の増加に伴い、それに堪えうるための町村強化策が進められるにつれて郡は影の薄い存在となっていったのである。
 大正一二年(一九二三)に郡制は廃止され、同一五年には府県制、市制、町村制の改変、普通選挙法の実施、中央政府の地方に対する監督権の緩和による市町村自治権の若干の拡大などもあった。
 しかしその経過を通していえることは、年ごとに増大してきた軍備拡張、軍需産業の育成などからくる国家財政の窮迫である。その負担が地方財政にしわ寄せとなり、地方に対する委任事務が増大、常に地方財政は窮乏を重ねたのである。また詳細な点では制度の改正もかなり行われてきたが、その根本的な立場はその発足時のまま受け継がれ、中央集権的自治制度はゆるぎなく維持されていた。
 昭和期に入ってもその状態は全く変わらなかった。特に日中戦争から太平洋戦争突入の頃になると戦争目的指向が一層強化され、中央政治-府県-市町村-町内会(部落会)-隣組(十人組)として一貫した中央集権国家となってしまったのである。
 以上のように我が国の地方制度は、明治維新以来半世紀以上の長期にわたり中央集権的な形で維持されてきたが、敗戦によりそれは一八〇度向きを変え、GHQの占領政策に基づき民主的な英米系の地方自治が実施されることになった。
 大正一二年三月に郡制が廃止されるまでは、郡下各町村から郡会議員が選出され、郡長は選任されて自治体の運営に当たっていた。実施以来三四年にして郡という地方制度が廃止され、これにより同年三月末日限りで旧中山村選出郡会議員窪中鉄次郎、山村辰治郎ならびに旧佐礼谷村選出郡会議員飛田熊吉は中途退職した。続いて大正一五年六月四日の勅令により郡長以下の官吏がなくなり郡役所が廃止されたが、後に昭和一七年(一九四二)六月、各町村業務を円滑に運営するため、県行政事務の一部を掌管する行政機関として、伊予地方事務所が郡中町に置かれた。
 大正一四年四月一日中山町が町制を実施した。明治四○年(一九〇七)一月一日中山村と出淵村が合併した時から望んでいたが、とうとう中山町の誕生となったわけである。
 大正一五年、市制、町村制が府県制とともに改正された。前年には衆議院議員選挙に普通選挙が採用されて、国民多年の宿望が達せられたが、今回の改正により地方議員にも普通選挙が採用され、郡制の廃止などにより種々の点で自治権が大幅に拡張されることになった。
 普通選挙とは、身分、階級、人種、財産、納税額、宗教、教育、性別などで制限せず、等しく一般国民が選挙に参加するのが本来の主旨であるが、この時の選挙権は男子に対してのみ与えられた。これ以前の制度は納税の多少に応じた制限選挙制であった。女子の選挙権が確立され完全な普通選挙になったのは、第二次世界大戦後のことである。
 町村制改正による公民の要件は、
  (1) 帝国臣民であること
  (2) 年齢二五歳以上の男子であること
  (3) 二年以上その町村民であること
の三つとされた。
 自治権の拡大については、
  (1) 町村長の選任は府県知事の認可を必要としなくなったこと
  (2) 町村会議長互選の途を開いたこと
  (3) 市町村の廃置分合、町村の名称変更、町村吏員の就職、退職など町村の自治権行使に対する国の監督権を緩和したことなどである。
 昭和四年(一九二九)三月一五日広田村より大字栗田が分離し、中山町へ編入された。
 終戦後自治行政が戦後の混乱から立ち直り、軌道に乗った昭和三〇年二月一日、新しい時代の要求に応えて旧中山町と旧佐礼谷村が合併し、新たに中山町として輝かしき一歩を踏み出したのである。
 昭和一五年から終戦までの行政機構はおよそ次のとおりである。
 ○執行機関  町村長、助役、収入役、書記、区長(部落会長)、隣組長(十人組長)
 ○議決機関  町村会議員
 ○協力機関ならびに各種団体  学務委員、消防組~警防団統計調査委員、衛生組合長、大政翼賛会、翼賛壮年団、村常会、部落常会、隣組、十人組、国民健康保険組合、在郷軍人会町村分会、国防婦人会~大日本婦人会、青年会~青年団、女子青年団、少年団、農会・産業組合~農業会、森林組合、商工会。