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中山町誌

一、 一般国道五六号

 明治維新後、全国各地で道路整備が進められ、やがて、中山町を通る道路網もその中に含まれることになった。国道五六号線(松山~中山~大洲)の基盤として、かつて伊予五街道の一つに数えられた大洲街道が選ばれたのである。しかし、当初は、藩制時代の旧街道がそのまま利用され、道幅はせいぜい一間か一間半位のもので、路面も悪く勾配の急な所もあって、馬車や荷車の通行は困難であった。
 大洲街道は、大洲から行けば、内子、中山を経て、犬寄峠を越え、郡中・松前を抜けて出合の渡し船に乗り、そこから石手川土手に上り雄郡神社前、萱町を通って札の辻に達し、そこで他の四街道に通じていた。途中、内子・中山・郡中・筒井・保免に駅が設けられていたと『大洲市誌』に記されている。当時中山は、宿場町として発展していたが、犬寄峠では夜間しばしば山賊や山犬が出没し、郡中~松前には松並木があって夜間の通行は物騒なところであったと伝えられている。
 明治一二年(一八七九)、愛媛県令岩村高俊により「国県道路線・海港等仮定」が布達された。これによると、現在の国道五六号は県道第一等に仮定されている。この時の平均道幅は、二間一合四勺八才で、経路は「伊豫國温泉郡松山市街南堀端町ヨリ喜多郡大洲市街ヲ経テ西宇和郡八幡浜港ニ至リ海路豊後國海部郡佐賀ノ關ニ達ス」とあり、陸路里程は一八里一丁二九間七合二勺四才となっている。
 その後、松山市から南予地域に至るこの道路は、旧道路法では県道松山宇和島線、宇和島宿毛線に指定されていた。そして県内の主な幹線道路は、戦前までに第一次的改築とも呼べる整備が行われていたが、ほとんど未舗装であったし、また屈曲の多い道路で、本格的な自動車交通に適応するものではなかった。戦前の陸上交通では、鉄道交通がその中心的な役割を担っていて、自動車交通は補助的な役割に過ぎなかったのである。
 しかし、県下の自動車台数の推移をみると、昭和二六年(一九五一)の五、一四一台から昭和三九年三月末には、六万九、九二二台と飛躍的な増加をしており、交通量の増加と道路の改良、舗装率とのアンバランスが道路交通の混乱を生じ、これを早急に打開することが当時の政治的緊要課題となった。
 一般国道五六号は、四国西南部を結ぶ唯一の幹線道路であるが、特に伊予郡中山町から伊予市間は勾配、線形とも悪く、交通の難所となっていた。また犬寄峠附近六㎞の区間は全幅員四m程度で半経三〇m以下の急カーブ個所が数多くある。縦断勾配についてみると、五%以上の区間が四㎞程度あり、最急勾配は六%となっていた。
 昭和三八年度まで国道五六号線は、愛媛県が管理していたが、その後建設省の直轄管理となった。昭和四〇年度には、同省松山工事事務所が伊予郡中山町~松山市の間を担当して、伊予市から改築事業にあたった。
 特に難工事であった犬寄トンネルは、犬寄峠の改良に伴い計画された延長七三八mのトンネルである。地形は、峠より大洲側の勾配は緩やかであるが、松山側はかなり急勾配となっている。犬寄地区の西部に、ほぼ南北に中央構造線が存在し、その影響により附近一帯の地質も相当脆弱化していることが予想され、昭和三九~昭和四二年までの四ケ年にわたる調査を実施し、現在のルートに決定することになった。
 工法は、松山側より一二五mは「側壁導坑先進リングカット工法」、次の七五mは「側壁導坑先進上部半断面工法」、残り五四九・四mは「底設導坑先進上部半断面工法」と、三つの掘削方法で施工した。その間、悪地質のため側壁導坑先進リングカット工法区間では、東側導坑掘削の切羽で湧水が加わり、土砂の流出が多く、また建込んだ支保工が次々と変形したため補強し、ようやく導抗を保つことができた。側壁導坑先進上部半断面工法の区間では、上部半断面切拡げ中、断層破砕帯のため落盤し二〇〇立方mの岩砕が流出した。底設導坑先進工法の区間では、これも上部半断面の切拡げにおいて破砕帯のため、落盤及び支保工の座屈並びに沈下が多く発生し、土砂部以上に苦労したこと等が挙げられる。
 かくして昭和四二年度から四五年度にかけて、犬寄峠などの難所を解消、昭和四六年度に一次改築を完了するに至った。
 近年国道五六号の交通量の増加は著しいものがある。伊予郡双海町~伊予市大南の間は、第一次改築を終ったとはいえカーブが多く、勾配のある難所であり、特に大型車の影響による交通渋帯が著しい。この問題に対処するため、松山工事事務所は第二次改築事業として、昭和五五年度から犬寄登坂車線の建設に着手した。
 昭和五八年度より用地買収を始め、工事は昭和五九年度から松山側より順次着手し、延長二、九〇〇mの登坂車線の完成に向けて施工、現在に至っている。
 国道五六号は、中山町の中央を縦断し、これを基幹として県道及び町道網を形成しており、町民の身近な生活道路ともいえる。今後は交通災害を防止するため、信号・交通標識はもとより、歩道や自転車道等の整備を進め、一層道路機能の充実を図ることが課題となっている。

表6-1 国道改築の経過

表6-1 国道改築の経過