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中山町誌

三、 農業経営の実態

 本町は、全面積の六三・九%が森林に被われた典型的な中山間地域であり、耕地面積は全体の約二六%しかない。大部分が起伏の多い山腹や傾斜を利用した畑地、並びに谷間の棚田や狭隘な水田で、経営規模も約一ヘクタールと小規模で、個別経営体が主体であり、生産性が低い実情にある。
 このような中にあって、一部の畜産農家を除いた大部分の農家は、地域の気候、風土から生まれ先人が守り培ってきた、町の文化であり歴史である栗などの果樹を栽培している。それを主体に、夏秋野菜・葉たばこ・米・椎茸等の耕種類と近年導入した花卉、菌床椎茸等の作目による複合経営を行い、産地を形成している。
 一方、経営面を生産額で見ると、昭和五〇年が農業粗生産額二四億円の内、果実九億一、六〇〇万円、野菜一億二、〇〇〇万円、葉たばこ三億三、〇〇〇万円、畜産七億七、九〇〇万円、であり、平成二年は、農業粗生産額二七億円の内、野菜が七億一、七〇〇万円、葉たばこ三億七、七〇〇万円、果実二億七、九〇〇万円、畜産一〇億一、五〇〇万円となっている。昭和五〇年当時は、果実が生産額の一位を占めていたが、平成二年には、野菜が生産額の二六・八%を占め一位となった。
 このような推移は、果樹作物の柑橘・栗の栽培面積の低下や生産性の問題に。また中山間の特徴を生かした野菜の産地として、施設導入による雨除けとまとや夏秋きゅうり等の高収益作物、いんげん、みょうが等の軽量作物への転換に起因している。
 いずれにしても、先人のたゆまぬ努力と研鑽により、本町の農業基盤を構築してきた訳であるが、前述のような厳しい状況が経営基盤を揺るがし生産を低下させていることは否定できない。また、農業集落においては、後継者・担い手不足と共に、農家、非農家の混住の進行等により集落の維持機能においても憂慮される状況にある。しかし、農家には、農業に対する強い信念と経営意欲、そして高い技術により確固たる業績をおさめ、強固なる経営基盤を築いている優秀事例もあることから、将来の再編に明るい展望をいだくことも可能である。
 今後は、生産性の向上、経営の合理化を図る生産基盤の整備と高付加価値型農業をさらに推進し、経営意欲の高い農家を中心に、農地の流動化・集団化を促進して経営の拡大に努めることが必要である。また個別経営を補完する高機能生産組織や集落営農集団を育成し、国際競争、産地間競争に対抗できる足腰の強い構造の再編を図ることが重要な課題である。
 また、多様化する消費者ニーズに鋭敏に対応することも不可欠であり、農業を従来の第一次産業としてではなく、生産からサービスまでの機能を果たす、ボーダーレス産業として位置付け、産業構造全体の属性転換を図ることも必要である。