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中山町誌

第一節 民話

① 片足脚絆
 かっこうという息子が大工をしておった。ある日、息子が帰ってこない。親父さんが山から帰って、あがりかまちに腰をかけて脚絆を片つら脱ぎながら「かっこうは、もんたか」と聞くと、「いや、かっこうはまだ戻らんが」と言う母親の返事だった。
 「さがしに行かないけん」と言うて、親父さんは脚絆を片つら脱いで片つらのままで捜しに出かけた。「かっこう、かっこう」と言うて、山を捜しまわった。それで、かっこう鳥は、片つら足が黒くて片つらの足は白いのだという。  (大矢 小池 高岡 福岡)

② 時鳥と百舌
 百舌が時鳥にうまいことを言ってお金を借りた。昔のことよ。ところが百舌は馬鹿じゃから借りたのをもろたように思って使ってしまった。時鳥は几帳面な性格だから、百舌のところへお金の請求に行ったわけよ。百舌が使い果たしたのを知った時鳥は怒った怒った。それから「トッテカケタカ、トッテカケタカ」というて、一生償いをしてくれと鳴きだしたらしい。
 百舌は馬鹿じゃから、お金を返すこととわがらずに何でも採って掛けたらええように思って、虫をくわえては木の枝などに刺すようになった。そして刺しては忘れる。時鳥は覚えとるからいつも「トッテカケタカ、トッテカケタカ」というて鳴く。借りたものは百舌のように忘れずに返さないかんと鳴くんだとさ。  (坪之内・小池・平沢・高岡・上平村・犬寄・栃谷)

③ 蛙と蛇
 ある時、蛙が蛇に「お前は足がなかろうが」と言って馬鹿にしたというんじや。蛇は足がないから蛙みたいにピョンピョン跳べずにもがいていた。それで蛙に負けんだけの動作を身につけないかんと非常に努力したわけよ。
 そして馬鹿にした蛙を呑むおりにはお尻から呑むのよな。頭から呑んだりせんわけよ。くわえるのも、片足くわえて、お尻から呑むわけよな。人も馬鹿にするものではない。馬鹿にされた人は、やがて蛇のように足がなくても、どんどんと努力して、蛙に負けんだけの者になるんじゃて。  (坪之内・柿谷・添賀)

④ ハメ(蝮)とわらび
 ハメが、ちくぜん山で昼寝をしていたら、チガヤがハメの体を突き通してずーっと伸んだわけよ。それで、ハメが驚いてみたが、チガヤが体をぬい通しとるきん痛うて動かれん。そうしているうちに、今度はワラビが下から出てきたと。
 そこでハメがワラビに頼んだわけじゃ。「お前ワラビよ、わしゃここで昼寝しよったけど、これが突き通って動かれんのじゃが、助けてくれんか」。わらびが「わしのいうこと聞くか」と問うたら「よし聞いてやろう」と。そこでハメを助けることにしたと。
 「わし(ワラビ)をもんで最初に出た汁をつけたものは食わんか」と言うたら「おうそれじゃったら食わん、易いこっちや」。ワラビは「もう一つわしゃ頼みがあるぞ、わしの汁を足につけて、『ハメマダラ、人食うな、ちくぜん山のチクワラビ、ワラビのご恩を忘れたか。アブラオンケソーカ、アブラオンケソーカ』と言うた大は食わんか」と言うた。「よし、それを言うて汁をつけた人は必ず食わんきん助けてくれ」と、ハメは頼んだと。
 それで、ワラビがハメの下から持ち上ってチガヤが抜けたんだと。それから、このおまじないをすればハメに食われなくなった。  (永木・高岡)

図7-1 中山町の昔話

図7-1 中山町の昔話