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中山町誌

二、 信仰伝説

⑨ 天 狗
 永木の三島神社には、よく天狗がやって来て、鳥居や楼門松にすわって神官をからかっていた。ある日神官がそこを通りかかったところ、天狗が神官の烏帽子を蹴ったので、怒った神官は天狗の足を切り落としてしまった。天狗の足というものは、七日の間であれば継ぎ合わせることができるといわれていて、天狗は毎日「足を返せ、足を返せ」と神社にやってきた。七日目の晩にもやって来て返してくれるように頼んだので、神官は「里人に悪さをしなければ返してやろう」と約束したが、天狗はすぐその約束を破ってしまったので、とうとう返してもらうことはできなかった。
 以後、天狗の足は足塚として祀られており、足の悪い人がおまいりすると、悪い足が治るといわれている。  (梅原・永木・中平村)

⑩ 山 犬
 昔、出渕あたりの山には山犬が住んでいた。そこへ、一人の魚売りが毎日やって来ては、その山犬に魚を与えていた。ある日いつものように魚をやろうとすると、山犬が「急いで山を下れ」と言った。魚売りが言われた通りに山を下って様子を見ていると、「リン、リン」と音がして、先程まで魚売りがいた場所にヨヤマギョウの神が現われたのだった。「ヨヤマギョウの神に触れると死ぬ」といわれていたので、山犬は日頃の恩返しをするために魚売りを助けたのである。  (影之浦)
 (注) この物語に出てくる山犬と、犬寄伝説に出てくる山犬とは全くちがう。中山には二種類の山犬がいたらしい。

⑪ 大矢の池
 大矢にある池は小池の御池につながっているといい、この二つの池を大蛇が通っていたという。この大蛇は御池で田を耕していた人を牛ごと引っぱり込んでしまう程の大蛇だった。大矢の池には弁天様が祀ってあるが、そのお社があるところに五合と、小池の池に五合、両方で一升の木綿針を入れて蛇を退治した。
 この池には鯉がいて、中には一メートル位の大きいものや片目のもおり、村の人々はこの鯉を大事にして近寄らなかった。この鯉が死んで浮くと、死んだ鯉の向いている方向の人が死ぬといわれていた。また、この池には水神様が住んでいるという。  (大矢・中野中)

⑫ 大矢の池の片目鮒
 小池組みに住む鮒は、ことごとく片目である。神明のお使いだろう。不思議なことにこの鮒の数は村人の数と同じで、村人が一人死ぬと鮒も一匹死ぬ、村人が一人生まれると鮒も一匹生まれるという。  (大洲随筆七不思議)

⑬ 七人塚
 毎年一回、小池の方から中野中・仁川登の方面にヨヤマギョウという妖怪が歩いて行くという。その時はチリンチリンと音がし、付近の空気に触れた者は全員死ぬといわれていた。それで音がした時は、村人は皆家の外には出ないという。ある時、中野中の七人家族がその空気に触れたため全員死んでしまった。その墓は中野中に七人塚として祀られているという。  (中野中)