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中山町誌

第九章 民謡

 民謡は地域住民の暮らしの中から生まれ育ち、民衆の中に伝わり、生活感情、作業意欲を高めるため素朴に歌った歌である。労働の中で歌われたもの、祝いごと、祈願ごとの中で歌われたもの、盆踊り、子守り歌に歌われたものなどがある。

 1 中山伊予節 

 伊予の中山名物名所 清水うどんに茶屋の飴
 つつじ見よなら大興寺 久保の太鼓に目をさまし
 さめちゃ積み出す栗と炭 紙に筍傘やそれから
 ほかにないのが秋の紅葉や記念碑 一寸と来て見やれ

 2 中山行進曲

一 愛媛の県伊予郡 その郡南に来ても見よ
  人口八千有五百 戸数は一千二百余戸
  開け行くよの中山は これ我が町ぞ我が里ぞ
二 北は上灘佐礼谷や 東は砥部町広田村
  西と南は喜多郡 満穂立川大瀬村
  隣れる里の多くして 往き来の人は又繁し
三 言うなかれ山間へき
  しゅうと 海をさることわずか二里
  町の栄えは国の富 世におくれじと励む身に
  時な尊とし違えそと サイレン響く町役場
四 天に恵まれ人励み 日本一と知られたる
  中山栗の名産地 炭材木と名も高く
  筍煙草と数えれば 積み出す物に限無し
五 四季の眺もうるわしく 春はつつじの大興寺
  夏は蛍火夕河鹿 月澄み渡る浄光寺
  すだく虫の音雲の山 月雪花の楽園地
六 烏帽子藤縄永田なる 三つの宮居神さびて
  千歳の紫雲たなびくは 大山積の大社
  川崎神社は文学の 神菅公ぞおわします
七 源冠者範頼は 昔語りに夜は更けて
  ほのぼの明ける蒲山や 夕日映えある伊福城
  合田天山垣生城址 英雄墓は苔むしぬ
八 遠き歴史のあと問えば 紀元一千四百年
  天平勝宝の其の昔 行基菩薩が済土の地
  尊き法の鐘の音や 菩提樹茂る盛景寺
九 幾代の春を迎えても 揺がぬ空の雲晴れて
  げに尊きははたご山 御代の栄えの嬉しさに
  いざや励まん国のため いざや励まん町のため

 3 佐礼谷音頭

〇 朝日かがやき階上燃える 燃える百姓の心意気
  利がま研いだか下刈りがまも モズとモズとが鳴き交わす
  ホンニ佐礼谷来てみんきんよ
〇 水はせせらぎホタル火わたる 青い光の浮き沈み
  乙女純情あの人まてば 夜風なぶるよ胸のうち
  ホンニ佐礼谷来てみんきんよ
〇 伊予灘はるか炭やくかまに チラリ粉雪が降りかかる
  いとし若妻かわいい手甲 手甲カスリの紺におう
  ホンニ佐礼谷来てみんきんよ

 4 中山栗音頭

一 ハァートンネル抜けたら みどりの盆地
  中山栗の花ざかり ヨイトナ ヨイトナ
  乙女心が咲くような 甘いせつない花じゃった 花じゃった
  ドッコイクリクリ中山ホイ
二 ハァーおいしい空気を たっぷり吹うて
  実った栗がずんぐりと ヨイトナ ヨイトナ
  イガはこわいが弾けりゃ笑て 色はほんのりうぶなやつ うぶなやつ (以下噺子同じ)
三 ハァーあの娘こないだ 来た嫁じゃなのに
  なんと地下足袋早はいて ヨイトナ ヨイトナ
  主といそいそ山行く仕度 今日も嬉しい栗拾い 栗拾い  (噺子同じ)
四 ハァー栗じゃ赤中が 三国一よ
  艶と香りと品のよさ ヨイトナ ヨイトナ
  中山育ちが目につくはずよ 一日千両味万両 味万両 (噺子同じ)

 5 中山音頭

一 伊予の中山 緑のまちよ 青い風吹く よいところ
  わらび芽を出す 秦皇山に 登りゃはるかに 光る海
  ※(さあさ皆で 揃って踊ろう 仲のよいよい中山音頭
二 君とゆきたや 櫻のころは 花の雲ひく 赤海へ
  つつじ燃えたち 菩提樹茂りゃ 若いふたりの 夢も咲く
  ※(くり返し)
三 源氏ゆかりの 仁壬川の橋に ロマンかきたて 飛ぶほたる
  招くあかりは 宮島まつり ゆかた姿で 気もはずむ
  ※(くり返し)
四 ゴルフがえりは 中山栗よ 食べてうなずく 日本一
  みかん しいだけ 手塩にかけて どれも自慢の 味のよさ
  ※(くり返し)
五 かわす笑顔の 内山線で 大洲 松山 ひと走り
  古い伝統 伝えて伸びる 意気と希望の ふるさとよ
  ※(くり返し)

 6 臼挽歌

〇うすよ回れよやり木をつれて 師走二〇にゃ ひまをやる
〇わしとお前はひきうすみょうと(夫婦) 入れて回せば粉がおりる
〇盆にゃぼた餅 彼岸にゃ団子 五月五日にゃ かしわ餅
〇こんこひく時 歌わにゃならぬ つまみ食うたかと 思われる
〇ゆうべ夜這が 猫踏みしゃいだ こたつかまんが 猫もどせ
〇うすひく時は 力いれておひき かけたたすきの 切れるまで
〇こんこひくときゃ ねぶり目でひくが 出してくうときゃ 猿まなこ
〇こんこひくときゃ ほろほろ涙 こんこはねるときゃ 猿まなこ

 7 地づき音頭

〇ここの屋敷は 目出たい屋敷 鶴と亀とが ヨイヤ 舞をまうヨー
 ※(ヨーイヨーイヨイヤナ アレワイセ コレワイセ サーサナンデモセ)
〇めでためでたの 若松さまよ 枝も栄えりゃ 葉もしげる
 ※(くり返し)
〇お前百まで わしゃ九十九まで ともにしらがの はえるまで
 ※(くり返し)

 8 雨乞い音頭(雨乞い踊り歌)

〇雨を下されやヨーエー エー竜辰さまよ サーサー ヤーエー ヨイヨイ
 雨をもろたらヨーエー エー作によかろよかろ アレワイセー アレワイセー
 いかな下されやヨーエー エー竜辰さまよ サーサー ヤーレー ヨイヨイ

 9 盆踊りの歌

〇音頭とる子が棚から落ちて 棚の下から泣き音頭
〇太鼓たたいて踊り娘寄せて 中でよい娘を嫁にとれ
〇逢いにきたのに水かけられて わしの思いは水のあわ
〇七つ八つからイロハを習うて ハの字忘れていろばかり
〇姉がさすなら妹もおさし 同じ蛇の目のからかさを
〇唄はうたいたし唄のつづ知らず 寝てもさめてもこればかり
〇わしが若いときや灘まで通うた 灘の小網で夜が明けた
〇ここで唄うたら聞こえよか知りょか 川の向かいの若殿に
〇何時も七月の盆ならよかろ 踊り日付けで殿に逢う
〇山の中でも三軒家でも 住めば都じゃわが里じゃ
〇かわいかりゃこそこの手も当てた にくてこの手があてらりょか
〇下へ下へと枯木を流す 流す枯木に花が咲く
〇踊りなされよ踊子さんよ はいたぞうりの解けるまで
〇お前一人かお連れはないか ここは石橋お手をとる
〇扇子投げたが届いたか 殿よ投げもせぬのになじょ届こ
〇御苦労さんだよ太鼓打ちさんは 嶋らぬ太鼓を鳴れなれと

 笹花おくり
 踊りの上手な人、熱心な人に休み中に笹花(竹笹につるしているタオル、ウチワ)を贈り、他部落から来た人には、「ほめ言葉」を言うたり、ほめ言葉の掛合(申し合い)などをした。

 ほめ言葉の前置き
 待った待った待たしゃんせ、踊り子さんをほめようか太鼓打ちさんをほめようか
    以下ほめ言葉

 盆踊り太鼓
一 手踊り
 ドデドンカラカッカッカドデドンカラカッカッカ
 ○○○××××    ○○○××××
 ドデドンカラカッカッカ
 ○○○××××
 ドデドンドデドンドデドンドデドン ドデドンカラカッカッカ
 ○○○○○○○○○○○○   ○○○××××
 以上繰り返したたく。(○印は太鼓打ち、×印は太鼓の胴端を軽く拍子打ちをして、盆踊り歌にあわせる。)
二 扇子踊り
 ドンカカッカッカドンカカッカッカドンカカッカッカ
 ○××××   ○××××  ○××××
 ドンドンドンカカッカッカ
 ○○○××××
 以上を繰り返してたたく。

 10 木挽歌

〇山で木を切りゃ木の根がまくら 落ちる木の葉が夜着になる
〇のこもやすりも番匠がねも 置いてお帰り米代に
〇三度飯食うて座るは大工 木挽ゃ可愛想や本をしゃくる
〇木挽きさんたちゃつかずのお米 ついて行きたい山小屋へ
〇木挽きさんかえ一升飯くろうて のこの柄のよなくそたれる
〇嫁になるなよ木挽の嫁にゃ 仲のよい木を引き分ける

 11 田植歌

 (朝の唄) まだ今朝は霧の最中よ 静かに通れよ石の橋
 (昼の唄) 今頃は四つのさがりよ よう植えていんでほめらりょ
 (夕の唄) 日の暮れぐれに駒どこへつなごや うね谷越えてとおな草につないだ
〇苗持ちは一の大役 晩にゃ筍の味噌汁
  みそ汁はいつでも食べます 姫ごお出しや抱いてねる
〇さんばいは笹でおろせよ ざらりとささがゆくように
〇さんばいはあらたかな神ぞな 馬からおりて笠をとれとれとよ
〇三月にゃ籾を蒔きこむ 五月にゃ手苗とりあげよ
  八月にゃ稲と栄えて 穂に穂がさして豊年じゃ
〇奥山の草刈ばんこに 栗の花が咲いたかの
  咲いたぞの 咲いたぞの 奥には今朝も とうから咲いたぞの
〇苗たもれ手苗たもれや その間に腰をのべようもの
〇美しやつぶし卵を京の殿ごにくわしたら
  十七八は盆の小麦よ今こそさすら寝ごろよ
〇蚕飼いじゃて馬鹿にはおしな うちの隣にゃ蔵もある

 12 草刈歌

〇色の黒いのをなじみに持てば 烏がなくたび思い出す
〇色の黒いので惚れ手がなけりや 山の烏は後家ばかり
〇うちの親父は南瓜のつるよ 隣近所をはいまわる
〇あなたばかりに難儀はさせぬ 難儀するなら共難儀
 (草刈歌といって特別の文句はなく、ただ歌い節がちがうだけで盆踊りの歌の文句もとりこんで歌っていた。)

 13 籾摺歌

〇今年豊年穂に穂が咲いて 道の小草に米がなる
〇かけておやりや籾かけさんよ 中の心棒がみえぬよう
〇かけておくれよ籾かけさんよ 臼の横木がみえるよう
〇くるりくるりと回るは淀の 淀の川瀬の水車
〇早くこの籾摺り上げしもて 殿さん道後の湯に行こや
〇だいて寝かせて手枕すけて 何か不足で目をさます
〇那須与一は三国一よ 男自慢の旗がしら

 14 はた織り歌

〇神か仏かョ はたおりさんはよー いつも鳥居の前におるよー
〇何の因果にョ はたおり習うたよー 夜も夜中もたすきがけよー
〇糸は切れやすく うちゃつなぎやく うちのかあさんおこりやく
〇立てばしゃくやく すわればぼたん 歩く姿は 百合の花

 15 はぜ取り歌

〇なんの因果で はぜとり習うたよー つなが切れたら
  (アーア ドコイサノヨイ ドコイサノヨイ) 命がけよー
〇命頼んだ つな一すじによー 高い木の空
  (アーア ドコイサノヨイ ドコイサノヨイ) 日本晴よー
〇ちいさい時から はぜとり習うたよー 鳥と仲間で
  (アーア ドコイサノヨイ ドコイサノヨイ) とびまわるよー
〇ここで米買うて 利はないけれどよー 娘見に来た
  (アーア ドコイサノヨイ ドコイサノヨイ) 会いに来たよー

中山音頭

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