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久万町誌

10 古岩屋・岩屋山

 古岩屋と岩屋山の植物相は不可分の関係であるから、岩屋山の植物についても記することとする。
 礫岩峰の岩壁には、イワヒバの群生、またセッコクなどの着生も見られるが、イワヤシダ、イヨクジャクをはじめとするシダ類の多いのが、この山の特色といえよう。
 岩屋山には、スギ、ヒノキ、カシの大木のほか、トチノキの老木が多く、この木の花の咲くころはみごとである。これらの樹下には、リョウメンシダの大群生、谷ぞいの湿地には、クジャクシダ、イワヤシダの大群生、ヒカゲワラビ、ウスヒメワラビ、シラガシダなどが見られる。また、昨今、目だって減っているものに、イヨクジャクがある。
 着生植物では、イワベンケイソウ、オシャクシデンダ、シノブ、ヘラシダ、シシンラン、カタヒバ、イワギリソウ、ベニカヤラン、ツリシュスラン、ヨウラクラン、ウチョウラン、マメヅタラン、カヤラン、ムギラン、トケンランなどが知られている。イワギリソウは小植物ながら、夏の花時には、筒状で淡紅色の愛らしい花をつける。
 寺の上の方には、ヤブミョウガの群生のほか、イイギリも多い。また、下の川ぞいの小道のそばでは、ノシュンギク、マムシグサ、薬用のトチバニンジン、スズムシソウ、木本では、マタタビ、ヤブニッケイから、シロダモ、アオジクユズリハ、ユズリハ、ミズキ、ウラジロガシがあり、竹の類では、昔矢に使用されていたヤダケ、スズダケ、メダケ等が自生している。
 植物分布の上から奇異な存在の植物として白山権現の岩峰に、キハギなどにとりかこまれた、ウバメガシの古株がある。ウバメガシは、普通暖地の海岸などで自生する植物であるから、ここ岩屋山にあることについての原因は、今のところじゅうぶん解明されていない。もし、自生のものであるならば、今の岩屋山はその昔、海岸であったかも知れない。
 なお、この近くに、暖地で見るアカガシの老木があったが、二十年余り前に、炭材になってしまったのでもう見ることができない。
 古岩屋の岩峰でも、たくさんのイワヒバを見るほか、湿地に入ると、クジャクシダ、イワヤシダ、ヤブソテツ、イワガネゼンマイ、リョウメンシダ、また着生のオシャクシデンダ、シノブなどに、ツリフネソウ、ナツトウダイ、木本の類では、ケンポナシ、メグスリの木、クロモジ、シロモジ、ホウノキ、トチノキ、カエデの類も多く、秋になると紅葉の名所となる。
 ここから畑野川へ出る湿地には、ミズゴケのほか、日本でも北の方に多い、ヤマドリゼンマイがある。これは特に珍しいことである。
 下畑野川へ出ると、住吉神社境内では、自生のものではないと思われるが、十数本のカヤの大木が目につく。
 下畑野川から野尻へ出る林では、昭和六年、面河渓で発見命名のオモゴザサの自生が見られる。