データベース『えひめの記憶』

えひめの記憶 キーワード検索

久万町誌

2 昆虫類

 自然環境が昆虫の生息に適しているため、昆虫の種類も非常に多い。
 三坂峠(七二〇㍍)近辺は、雑木林、原野などが多い関係で昆虫の多発生地になっている。特にクロシジミは、この地方にのみすんでいる珍しいチョウなのである。このチョウは、幼虫時代をクロオオアリの巣の中で過ごす。これは、クロシジミの幼虫が出す汁をクロオオアリがなめ、クロオオアリはクロシジミにえさを与えるしくみ、すなわち、共生生活を営むためである。クロシジミのすんでいる雑木林のクヌギには、オオケブカアブラムシがいる。
 イボタの木を食草とするウラゴマダラシジミも多く、雑木林一帯には、夏のころ、アカシジミ、ミズイロオナガシジミ、オオミドリシジミ、サツマシジミ、オオムラサキ、ゴマダラチョウ、コムラサキ、イシガケチョウ、アオスジアゲハ、ルリタテハ、アカタテハ、クロヒカゲモドキ、キマダラヒカゲ、コジャノメ、ツマグロヒョウモンなど多くのチョウが見られる。
 夏の終わりのころになると、タテハチョウ、ジャノメチョウの類が多くなる。
 湿地の草原には、オオウラギンスジヒョウモン、ウラギンヒョウモン、ウラギンスジヒョウモンのような草地を好むチョウが多い。
 水源地あたりまで下ると、アサギマダラ、アゲハチョウの類、甲虫類、ミツバチ、ハナバチの活動がよく目にうつるようになる。
 スギ、ヒノキの林では、ヒグラシ、ツクツクボウシ、ニイニイゼミ、ミンミンゼミ、アブラゼミの鳴き声もにぎやかである。
 甲虫の類では、ミヤマクワガタ、ノコギリクワガタ、コクワガタ、カブトムシ、カナブン、シロテンハナムグリやカミキリムシ、コメツキムシ、ゾウムシ類がすんでいて、三坂峠近辺では、南北両系の昆虫が混生する昆虫相をなしている。
 皿ヶ嶺の竜神平付近の雑木林には、世界でここだけにしか生息していないといわれるベニモニカラスシジミがいる。このチョウは、昭和三一年、県立博物館の太田喬三・楠博幸が発見し、その後、根気強い研究を積み重ねた結果、その生態をつきとめた。
 ベニモンカラスシジミの、卵からかえった幼虫はコバノウメモドキの葉をたべて成長し、七月ごろ親になり、ウツギ、ミヤマシグレなどの蜜をあさって生活する。このベニモンカラスシジミは、昭和三七年県指定の天然記念物となり生息地の林とともに保護され、現在に至っている。
 このほか、一〇〇㍍以上の林には北方系のフジミドリシジミ、アイミドリシジミ、エゾミドリシジミ、キバネセセリ、ツマジロウラジャノメなどの珍しいものもいる。
 頂上近くでは、山頂を占有する習性のあるミヤマカラスアゲハ、カラスアゲハ、キアゲハ、南方系のモンキアゲハ、ツマグロヒョモンなどの活動が見られ、面白い。そのほか、山頂及び尾根づたいでは、上昇気流に乗って来る数多い昆虫をみることができる。
 六月下旬から七月上旬になると、三坂や山麓で発生したオオミドリシジミも山頂に集まるようになる。
 竜神平の草原では、ハンカイソウなどの花にヒョウモンチョウの仲問などが群がるのも見られる。
 甲虫の類では、アカジマトラカミキリ、ヨコヤマヒゲナガカミキリ、マダラクワガタ、ヒメオオクワガタ、アオアシナガハナムグリなどの北方系のもののほか、ヒメオサムシ、オオオサムシ、時には、イガブチヒゲハナカミキリ、スネケブカヒロコバネカミキリ、シコクオオヒラタハナムグリも見られる。朽木には、ベニヒラタムシ、マダラクワガタ、キノコにくるカタボシオオキノコムシなどいろいろなものがいる。
 ブナ林では、夏のころ、エゾゼミ、コエゾゼミが、山腹の林ではミンミンゼミ、ヒグラシ、アブラゼミが鳴きつづける。また、ノリウツギの花のころには、アオバセセリ、キバネセセリ、アサギマダラも活発に活動する。これらの昆虫が、春から秋にかけて自然を舞台に舞うさまはすばらしい。
 トンボの類では、化石動物といわれるムカシトンボを皿ヶ嶺で見かけることがある。更に、ウスバカゲロウ、カワトンボ、ハラビロトンボ、シオカラトンボ、シオヤトンボ、コシアキトンボ、美しいミヤマアカネ、ショウジョウトンボ、なわばり根性の強いギンヤンマのほか、コオニヤンマ、オニヤンマ、ミルヤンマなどが全域にわたって生息している。
 ハチのなかまでは、ミツバチ、スズメバチ、アシナガバチ、マルハナバチ、ジガバチ、クリタマバチ、アオムシコマユバチなどが生息している。
 近年、目だって減ったとはいえ、各河川の清流にはゲンジボタル、ヘイケボタルなどの幼虫が、カワニナなどをたべて生育し、その成虫は初夏の夜、青白い光を放って群飛する。
 また、九月にはいるとそこかしこの草原で、マツムシ、スズムシ、クツワムシ、キリギリス、エンマコオロギ、ミカドコオロギなどが、夕方から夜半にかけて美しい声で鳴きつづける。ハエの類ではニクバエ、ショウジョウバエ、イモバエ、キンバエなどが生息しており、力では、アカイエカ、キナハマダラカ、ヒトスジシマカ、トウゴウヤブカなどがいる。