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久万町誌

5 天狗の涙石

 久万町大字露峰の篠崎さん方に、久保田という田があります。その田の真中に、一〇キロくらいの石が一つ置いてあります。
 これが天狗の涙石といわれている石なのです。
 昔、この田は庄屋さんの田でありました。村中の娘さん連中を集めて田植えをしている真最中に、裏山より一羽の天狗が飛んで来て田植え歌を歌い始めました。こうなっては、こちらも負けてはいられません。庄屋の命令で娘たちも一生懸命黄色い声をはりあげて歌いましたので、とうとう天狗の方が負けてしまいました。天狗はくやし涙をぽてぽてと落として山へ逃げて帰りました。その涙が石となって残ったのが天狗の涙石といわれているこの石のことです。
 それより後、この久保田の田植えは、天狗の涙雨でいつも大雨になりました。それで、他の田植えは、久保田の田植えの日ばかりは敬遠して田植えを見合わしたということです。