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久万町誌

第一〇章 民間信仰

 信仰に関するものは、他章において直接、間接に取り上げられているので、ここでは多少の重複はやむをえないとしても、一応、他章において問題としている観点を離れて ①主として、民間の俗信について、住民の心情生活における意義の面から取り上げ、②あわせて久万町内にある神社、仏閣に直接関係しない諸宗教の沿革及び現勢の概況についても触れることにする。
 ①については、文書、記録の類もほとんどなく、したがって実地踏査及び、各地域の古老との面談によって得たものを資料としている。幸いにしてごくわずかではあるが、非常に形の変わってきたもの、なくなってしまったもの、滅亡の寸前にあるものなどに接することができた。
 口述内容は、個々別々でその差はあるが、全体について大略を記せば、これらの古老が若いころ(あるいは子供のころ)に、①昔はこのようにしていたという話を聞いたことがある。②実際にしていたのを見たことがある。③実際に行った。④第二次世界大戦前までは行っていた。⑤昭和三○年ごろまで行っていた。⑤昭和四○年ごろまで行っていた。⑦現在も昔のまま行っている。⑧方法は多少変わったが現在も続けて行われている。と分けた場合、①②③に該当するものが最も多かった。したがって、この章では概略一五○年くらい前までは確実にさかのぼり得るものであるが、現況ではない。はなはだ流動性を含んだものである。
 資料は、個人の生活及び村落共同体、あるいは家庭、あるいは産業に従事する日常生活全般と密接に結びついた事象ばかりである。そこで、ここではまず、各地区に共通の宗教的行事(年中行事)についてその相違点に注意しながら順に記述し、ついで、同じく各地区共通の行事ではあるが恒例の年中行事とは言いがたいものを挙げ、その異同をみていくことにする。更にある地区にのみ伝承されているような宗教的行事、及び信仰形態を取り上げて、その沿革についてもできるかぎり触れていくことにする。
 なお、資料の分類、整理に当たって注意した点は ア、各部落共通のものについて考えられる特色はないか。イ、仏教系、神道系といった性格の特色がみられるか。ウ、地形的にみた閉鎖性を持っているか。エ、産業構造上の特色が認められるか。オ、旧久万町について門前町、宿場町といった特色が認められるか。等である。その結果、宗教的行事のほとんどが部落単位になっていること、また、年中行事が大半であること等がわかったのであるが、これらはいずれも久万町全体としての地域的態様といったものであり、住民の生活意識に根深く食い込んだ信仰感情において共通に認められる特色といったものである。