データベース『えひめの記憶』

えひめの記憶 キーワード検索

久万町誌

3 児童福祉

 昭和二二年一二月、児童福祉法が制定されて児童の基本的人権が尊重され、あわせて児童の心身ともにすこやかな育成をはかることが規定された。さらに、昭和二六年にわが国の次代を背負う児童観を代表するものとして児童憲章の宣言が行われた。その総則では
① 児童の基本的人権か尊重され、その成長が確保されなければならない。
② 児童は社会の一員として重んぜられ指導されなければならない。
③ 児童はよい環境で育成されなければならない。
とあり、大人はそのように努力すべきであると明記されている。
 児童福祉ということばは、戦後使われるようになり、孤児、浮浪児、不良児等恵まれない特殊な状態にある児童を保護救済することを大きな内容としていたが、次第に要保護状態に陥る可能性の強い児童を未然に防止する施策を講ずることを重視するようになった。
 児童および青少年福祉のためには、児童の心身の発達におそいかかる経済的、環境的な障害から安全を守るだけでなく、その健やかな育成のためにあらゆる可能な機会が提供されなければならない。それには、公的なものと私的機関が密接に結びつかなければ、効果を期待することはできない。
 児童福祉事業には、環境不遇児、精神障害児、身体障害児、問題児、一般児童の保護、援護、指導が考えられる。公的な機関としては次のようなものがある。
児童相談所……児童福祉法により都道府県に設置し、相談、科学的な判定、一時保護、児童福祉施設への入所、里親および保護委託者への委託、児童の家庭指導を行う。
福祉事務所……相談、調査、個別指導、集団指導等を行う。
保 健 所……正しい衛生知識の普及、健康相談、健康診査、保健指導、療育相談、育成医療、児童福祉施設への助言等を行う。
児童福祉・社会福祉主事……児童相談所、福祉事務所の職員で児童の相談に応じ、援助指導を行う。
児童委員……民間の篤志家である民生委員が兼務し、児童及び妊産婦の生活、及び環境状態をつまびらかにし、その保護、保健、福祉に関して援助指導と自主的な福祉活動を行う。
児童福祉審議会……中央児童審議会が中央に一つ、都道府県児童審議会が各都道府県に一つ、市町村児童審議会は、その設置が市町村の任意であり、児童福祉に関する調査、審議、諮問に対する答申、意見の具申を行い、更に読物、映画などの文化財の推せん勧告を行う。
 児童福祉法の規定するもの以外に青少年問題協議会があり、昭和二八年同設置法が制定された。これは、青少年の不良化防止を目的として厚生、文部、労働、法務、警察等の連絡調整機関として設けられたものである。その活動内容は次のとおりである。
① 青少年の指導、育成、保護及び矯正に関する綜合的施策の樹立につき必要な事項を調査審議する。
② 綜合的施策の適切な実施を期するため関係行政機関相互の連絡調整を図ることを任務とする。
 次に、私的機関(団体)として、全国社会福祉協議会、中央共同募金会、社会福祉事業振興会、日本し体不自由児協会、日本児童福祉協会等があり、これらの団体は民間組織として全国的に下部とのつながりを持ち、児童福祉に関する調査、研究、出版、連絡調整、募金、資金貨付等を行い、一部団体においては施設経営の現業を行っている。
 児童福祉事業のうち、最も大きい分野を占めるものとして児童福祉施設がある。助産施設、乳児院、母子寮、児童厚生施設、保育所、養護施設、精神薄弱児施設及び精神薄弱児通園施設、盲ろうあ施設、虚弱児施設、し体不自由児施設、救護院、情緒障害児短期治療施設等がそれである。
 久万町においても、児童委員が中心となって児童福祉法にもとづく保護、相談、指導等に当たり関係機関との連絡をとりながら児童の福祉増進に努める一方、法に定める以外の子供の遊び場設置や整備、V・Y・S運動の援助、児童のための環境整備など自主的な活動を進めている。
 しかし、近年における都市化の現象は山村にまで進展し、児童のための自然の適当な遊び場を不足させ、児童の体力、活動力、事故防止等からも看過できない問題である。
 また、人口の流動は近隣の関係を疎遠にし、児童の育成に相互扶助活動を低調にしている。そこで地域住民の地縁的な連帯によって愛護する体勢を整え、組織的に継続した活動を促進する必要があり、子ども会、愛護班活動等を地域社会の人々の協力によって、関係機関と団体の連携のもとに育成されなければならない。
 児童手当制度は、児童を養育している者に児童手当てを支給することにより、家庭における生活の安定に寄与するとともに、児童の健全な育成・資質の向上に資することを目的に昭和四七年に創設せられ、その後改正が行れ、昭和六一年六月から給付面について大幅な制度改正が行われた。
 改正の概要は、次のとおりである。
① 第三子以降となっている支給対象を第二子に広げた。
② 中学校卒業までとなっている支給期間を小学校入学までに短縮。
③ 第三子以降の支給月額は、これまでと同額の五〇〇〇円、新たに支給対象となる第二子は、二五〇〇円とする。
  ア 久万保育園
 昭和二五年五月五日、久万町緑が丘の佐伯操が自宅二間(二○畳)で「子どもの家」を開設したのが久万町における保育事業の始まりである。
 当時は、畳の上で座机を使い昔の寺小屋を思わせるように、オルガン一台が備えられていた。「子どもの家」は小学校就学前の子どもを対象とし、当時約一〇名の子供と、一人の先生によって午前中のみ開かれていたものである。しかし、その後、子供が二〇人ほどにふえ、家が狭く、道路の交通量も増加し、危険になったので、昭和二七年四月、日本基督教団久万教会へ移った。さらに、昭和二九年一〇月、福井町に新しい久万保育舎を竣工し、定員五七名の久万保育園が厚生省の認可を受けた。昭和三〇年四月一日より久万町で唯一の児童福祉法による保育所として保育事業を開始した。定員六〇名、職員六名で保育事業を開始した。昭和五六年三月社会福祉法人育和会の設立が認可された機会に老朽化した園舎を移転改築が計画され、現在の緑ヶ丘に移転した。久万保育園の概要は次のとおりである。
  園  舎 六〇一・三三㎡
  運動場用地  九一八㎡
  定員 七五名(三歳未満児、四五名、以上児 三〇名)
  一 名 称  久万保育園
  二 所在地  上浮穴郡久万町大字久万町一四四七番地
  三 設置者  社会福祉法人 育和会
  四 開  園  昭和二五年五月五日
  五 定  員  乳幼児 七五名  生後四ヶ月以上で児童福祉法による措置児童
  六 職  員  園長・主任寮母・保母・栄養士・調理士・事務員・委託医
  七 受託時間  午前八時から午後四時まで
 大人たちは、子供たちに、よりよい環境を整え、成長に応じて、必要な経験をつみ、個性を尊重し、健やかにのびのびした子どもの育成につとめ、多様な保育のニーズに応えるため、乳幼児保育・長時間保育・障害児保育、また子育て電話相談では睡眠・離乳食・排泄・ことば、社会性、生活習慎の自立、その他、育児教室、地域行事への協力も積極的に行っている。
  イ ヘき地保育所
 昭和三七年一〇月には、山間へき地の恵まれない児童のためにへき地保育所が久万町大字二名に二名へき地保育所(定員三五名)として設置された。さらに、昭和三九年四月には明神へき地保育所(定員四五名)、昭和四〇年一〇月には、直瀬へき地保育所(定員五○名)、昭和四一年には露峰へき地保育所(定員五○名)、昭和四二年四月には、畑野川へき地保育所(定員五○名)がつぎつぎと設置された。昭和五三年四月一日から直瀬へき地保育所、畑野川へき地保育所、明神へき地保育所が幼稚園となり、久万町の移動福祉事業はますます充実していった。
   農繁期季節保育所(託児所)
 地域によっては、農繁期(特に田植時期)の幼児安全対策として季節保育所を開設していた。その対象者は一歳から保育所(以前は幼児学級)入所前までの幼児であった。その世話は、近所の篤志婦人三、四名が毎日交替で行い、農繁期最中の二〇日間ぐらい開設していたが稲作経営の近代化・合理化等、又社会情勢の変化に伴って見る影も無くなった。
  ウ 児童遊園地
 児童の健全育成を図るためには、家庭の健全化はもとより、地域社会においても、児童を危険な場所から守り、健全な遊び場を与えることなど、生活環境の浄化等、児童の育成環境の整備が必要であることから、町内各地に子供たちの楽しい遊び場として、昭和三六年頃から「児童遊園地」「ちびっこ広場」などが設置された。
 菅生総門橋の袂に遊園地を設置したのは昭和三六年である。ここは約一〇〇〇平方㍍の広場でブランコ・鉄棒・スベリ台・シーソー等が設置され、子どもたちのいこいの場所になっている。昭和四二年八月には藤棚が作られ、又町内篤志家の寄贈で植樹(一三本)され情緒ある遊園地として、地域の「盆おどり大会」・クロッケーの練習場として利用されている。
 現在の児童遊園地とその施設は下表のとおりである。
 エ V・Y・S
 愛媛県民生部は、昭和二六年から、友愛、奉仕、理想の三綱領のもとに、若いボランティアによる子どもの集団指導、明るい社会づくり運動を進め、児童福祉に大きな効果をあげている。久万町でも上浮穴高等学校V・Y・S(高校生によるグループ)と久万町V・Y・S(一般青年グループ)があり、町内の児童遊園地、子どもの遊び場の整備、観光地清掃、子ども会の集団指導・児童福祉施設・老人ホーム慰問などの活動をしている。
  オ 愛媛県青少年保護条例
 昭和四三年四月一日、愛媛県青少年保護条例が施行された。この条例では、青少年の健全な育成を阻害するおそれのある行為から、青少年を保護し、青少年の健全な育成を図ろうとするもので、すべてのおとながその自覚と責任を負うところが大きくなっている。さらに、この条例は、青少年そのものを取り締まるものではなく、すべてのおとなが、社会人としての共通な連帯意識と責任において、その姿勢を正し、青少年の指導にあたることをはっきりと示したものである。

児童手当支給状況

児童手当支給状況


児童遊園地とその施設

児童遊園地とその施設