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面河村誌

(二) 石鎚山の高山植物

 高山植物と呼ばれる植物は、普通標高二〇〇〇メートルの灌木帯以上の、高山に生育する特有なもので、日本には、五、六百種あるといわれている。
 石鎚山は、二〇〇〇メートル以下の山であり、本来であれば、高山植物は自生しないのが普通である。しかし、石鎚山には、種類こそ少なくても、純高山植物が自生しており貴重な存在となっている。
 石鎚及びその連山の植物相の成り立ちをみると、本州中部(日本アルプス)の標高二〇〇〇メートル以上の高山に自生している純高山植物の、ミヤマダイコンソウ・ヒロハノコメススキ・ツガサクラなどの類がある。また、北海道や千島列島にあるような北方系のものにキバナコマノツメ・コケモモ・ミヤマヌカボ・チシマゼキショウなどがある。この二つの系統のものが入り交じって石鎚の主な高山植物となっている。
 また、この地方を中心として生まれた特産植物のイシヅチボウフウ・タカネオトギリ・ヒメキリン・シコクイチゲなどもまた重要な要素となっている。
 さらに、ハスノハイチゴ・クロタキカズラ・ヨコグラノキなどのように、中国(中華人民共和国)大陸と縁の深い大陸植物も交じっている。
 イシヅチザサの笹原の間に、点々と残った砂礫地や道ばたに黄色の大きな美しい花で、雄蕊の長いタカネオトギリがコオトギリと混生しているのもほほえましきながめである。面河の谷間には、キレンゲショウマの美しく咲いた黄色の花が、登山の人々を楽しませている。
 この森の谷間の砂礫地には、ネバリギラン・キバナノコマノツメ・ユキワリソウが自生している。ユキワリソウは、サクラソウ科の一種である。この森から、堂ヶ森に通ずる道ばたには、ハクサンイチゲと枝の出方の違うシコクイチゲの群生があり、白い花を笹の中に咲かせ、緑と白のコントラストがみごとである。

石鎚山の植生の垂直分布

石鎚山の植生の垂直分布