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面河村誌

一 わらべ唄

 わらべ唄には、二とおりの種類がある。一つは子供がみずから歌うもの、一つは子供に歌って聴かせるものである。
 子供の唄には、その土地で生まれたもの、又は古く人の移住によって伝わってきて、ずっと歌われたものがあり、町方の生活・文化に影響されていない農村の自然の中で育った文学といえばおおげさであろうか。
 その中に、いたいけない子供の自然を歌ったもの・物語り的なもの、特に、遊びに結びつくか遊びを伴ったものが多い。山村の自然を愛し、その単純な言葉にも、当時の思想的な背景もあり、その独特の調べには、素ぼくな感情が流れている。
 しかし近年になってから、テレビの普及・漫画の流行・幼児教育・小学教育の発達につれ、子供の生活の地域性は薄れ、昔からの子供の唄は、子供の遊びそのものの変化に伴い、しだいに子供の世界から消えつつあるのではあるまいか。
  ◎かいぐりかいぐり
  (赤ちゃんに動作を教える唄)
  ちょうち ちょうち あわわ
  じんのみ じんのみ じんのみや
  (片方の手のひらを人指し指で指す) 
  わくぐり わくぐり
  (両手をくるくる回す)
  にゃんの目
  (目を指でつり上げる)
  おつむてんてん
  (頭をたたく)
  ◎ほたる狩り
   ほう ほう ほうたるこい
   あっちの水は にがいぞ
   こっちの水は あまいぞ
   あまい水を のみにこい
  ◎凧あげ
   てんぐんさぁん 風おくれ
   いわしのあたまを 三つやろ
   おたふく みふく
   風がふいたら よふく
  ◎子守唄
   坊やは よい子だ ねんねしな
   ねんねのおもりは どこへいた
   あの山こえて 里へいた
   里のおみやに なにもろた
   でんでんだいこに 笙の笛
   おきゃがり 小法師に 犬はりこ
   たたいて きかすに ねんねしな
  ◎お月さん
   お月さん なんぼ 十三九つ
   まだ としゃわ わかいや
   わかい子 もうけて
   たれに だかそか
   ○○さんに だかそ
  ◎まりつき唄
   あんたとこ どこさ ひごさ
   ひごどこさ 熊本さ 熊本どこさ
   せんばさ せんば山には狸がおってさ
   それを かりうどが 鉄砲で打ってさ
   にてさ やいてさ それを 木の葉で
   ちょいとかくせ
  ◎おてだま唄
   西条山は 霧深し
   ちくまの川は 波早し
   さかまく波か つわものか
   のぼる朝日に 旗の手の
   きらくひまに くるくるくる
  ◎はないちもんめ
   かってうれしい はないちもんめ
   まけてくやしい はないちもんめ
   ふるさともとめて はないちもんめ
   ふるさともとめて はないちもんめ
   ○○さんとりたい はないちもんめ
   ××さんとりたい はないちもんめ
   ジャンケンポン
  (以下繰り返し)
  ◎かごめかごめ
   かーごめ かごめ
   かごの中の とりは
   いついつ でやる
   夜あけの晩に
   つるとかめが すべった
   うしろの正面 だあれ
  ◎なわとび
   大波 小波 風が吹いたら
   まわしませう
   一、二、三、四、五、六、七、八、九、十。
  ◎亥の子唄
   おいのこさんというひとは
   いちで俵ふまえて
   にいで にっこり笑うて
   三で お酒を作りませう
   よっつ よの中 よいように
   いつつ いつもの如くなり
   むっつ 無病そくさいに
   ななつ 何事ないように
   やっつ 屋敷をたてひろげ
   ここのつ 小蔵をたてならべ
   とうで とんとん つきおさめ
  ◎かぞえ唄
   一かけ 二かけ 三かけて
   四かけて 五かけて 橋かけて
   橋のらんかんに 腰かけて
   はるか向こうをながむれば
   十七、八の姉さんが
   花と 線香を 手に持って
   私は 九州 鹿児島の
   西郷隆盛の 娘です
   明治十年 戦争で
   せっぷくなさった 父上の
   お墓まいりに まいります
   お墓の前で手をあわせ
   ナムアミダブツとおがみます
   父上さまの たましいは
   フウワリ フワリと ジャンケンポン
  ◎てまり唄 (一)
てまりと てまりと いきおうて
   一つのてまりの いうことにゃ
   朝もとうから 起きなろて
   ちゃん ちゃん 茶釜を くみかえて
   とうちゃん かあちゃん おきしゃんせ
   おきて ままくて かみゆうて
   てんてこ寺へ まいらんか
   てんてこ寺の きじねこは
   内より そとより ほうろうっ
   ほうろじゃあるまい 傘じゃろ
   傘はなに傘 えちご傘
   えちごの山へ 入ってて
   あんな小屋へとまろうか
   そんな小屋へとまろうか
   あんな小屋は青みしろ
   こんな小屋は 青だたみ
   青みしろにとまって
   みしろははしかし 夜は長し
   あか時 すぎて 空見れば
   花のやうな じょうさんが
   あんどのあかりで 髪ゆうて
   お月のあかりで 湯つこて
   一っぱいおあがり じょうごさん
   二はいおあがり じょうごさん
   三ぱいめに さかながないとて あがらんか
   さかなは 白うり 赤大根
   低い山の ひくの子
   高い山の たかの子
   じょろじょろ川の あいの子
   せりやいりこで おおきめた
  ◎てまり唄 (二)
   およし よし よし 吉田の うまれ
   うまれおちると おちちに はなれ
   いまは 吉田の機織娘
   月に三反 木綿を 二反
   わしも 一度は いにたいものじゃ
   いぬるこみちで書いた紙 ひろて
   手にとりみれは おいろこいこい
   おまんをつれて おまん ひきたて
   やるものないが 筆や草紙や
   うたいの本や
   まだもやりたい 長崎かもじ
   入れてゆわえて後から 見れば
   わげが三尺 まきてが二尺
   あわし五尺のなげ島田 なげ 島田
 以上わらべ唄を若干記したが、これらはもちろんこの地方独特のものとはいえぬ。この地や各地で歌われた数々である。しかしながら、そのいずれにせよ、子供の心、素ぼくな遊びに歌われたものであり、そうした歌や遊びの中で、昔の子供は育ったものである。
 漫画本にテレビのスーパーマンにこよなく興味を持つ現代っ子、さてそこにどんな遊び、歌が生まれるだろうか。