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面河村誌

二 常夜燈

 村内各地に、苔むした常夜燈がある。常夜燈は文字どおり、一夜中燈明をあげるものである。菜種油に燈心をひたして明かしたのである。正月・祭礼の日はもちろんのこと、折につれ、いわゆる「お光」をともして、家内安全・五穀豊穣を祈るのである。
 常夜燈には、天照皇大神宮・金比羅宮・石鉄山などの文字があるものもあり、その縁日には、燈明をあげ、それらの神の遥拝所でもあった。
 文化(一八〇四)文政(一八一八)から天保(一八三〇)を中心として、その前後の時代は、四海波穏やかで、天下泰平が続き、生活の上にも、ゆとりがあり、常夜燈の建設なども、この時代に流行したものであろう。いずれにしても、祖先の素ぼくな信仰的な建造物として貴い遺産である。
 村内でいちばん古いと思われる常夜燈は、土泥にあるもので、享和四年(一八〇四)の建立、比較的新しいものは、大成にあるもので、大正十二年(一九二三)建てられたものである。
 若山(成)にある常夜燈は、巨大な自然石に雄渾なる「常夜燈」の文字、しかも、その筆者は、地元の中川弁十郎(昭和二十三年死亡)であり、この筆跡は、古今を通じて、恐らく村内随一のものではあるまいか。
 それらの常夜燈も、現在では、燈明をあげる者もなく、いたずらに跡傍にたたずむのみ、寂しい限りである。