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面河村誌

三 囲炉裏

 農家における囲炉裏は、生活の中心であった。一家の主婦は、朝起きれば、まず囲炉裏に火を付ける。中心に自在鍵が下がる。常に茶釜が掛けてある。飯・菜すべての煮物、周りの灰の中にさした竹串の芋の「でこまわし」・玉蜀黍焼・その他の焼物、炊事万端に欠くことのできないものであったが、また、一方暖房と一家団欒の中心でもあった。
 囲炉裏の四角から大きな木(株)、それにコマギを添えて燃やすのである。夜業するのも囲炉裏端、親と子、兄弟の対話はもちろんのこと、囲炉裏は来客のもてなし、応接間の役割さえ果たした。
 煙で黒光りのする天井・屋根裏・囲炉裏の火の歳月を重ねたことを物語っているものである。
 それが現在、炊事はプロパンガス、暖房は石油ストーブとなり、囲炉裏は姿を消した。もはや炉辺会談は望むべくもない。
 昭和五十二年(一九七七)新築の面河村役場庁舎の暖房は、重油によるセントラルヒーティング方式となり、都市の暖房となんら変わることがなきまでに至っている。