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美川村二十年誌

第一章 美川の風光

 国定公園面河渓が霊峰石鎚山の庭であれば、さしあたり美川村はその門口にあたる。この緑一色の山村に点在する観光資源はまた上浮穴郡にまたがる四国カルストとの関連も深い。とくに面河渓をはじめ柳谷村の五段高原、小田町の小田深山渓谷、さては久万町の古岩屋などの開発いかんによって大きな影響をうける。昭和三〇年に「大面河観光協会」が設立されたが、さらに広域観光開発を進めるため四三年に「上浮穴観光協会」と改められた。
 かつて文化の流入を阻止していた三坂峠も今は松山、高知を結ぶ国道三三号線の開通で旅客の目を楽しませる一風景と化した。松山から三坂を越え、久万町の中心街をすぎ久万川の渓流に沿う国道を南に下ると、これが面河川と合流するあたり、美川大橋の左側に清流を繞らせた白く輝く岩肌がそそり立ち、常緑の松をいただく美観が人目を楽しませる。これが美川村の中央で、観光の拠点「御三戸の嶽」であり、役場の所在地でもある。
 美川村は四国山脈中の山村であるため、低緯度にかかわらず冬の寒さが厳しい。したがって降雪も多く、しばしば交通も杜絶する。この降雪を活用して山腹のスロープにスキー場を開発し、現在これが冬期の観光資源として重要な役割を演じている。
 また夏期の冷涼さは都市に庄む人々への魅力となっている。面河川の清流を眺め、その支流直瀬川を溯れば弘法大師ゆかりの四国霊場四五番の岩屋寺がある。さらに四国カルスト大川嶺連山、高知県境に近い猿楽一帯は四国山脈の山なみが地形模型を見るように美しく、年々涼を求めて訪れる人の数を増している。いまその村内の風光の中から代表的ないくつかを採り上げてみよう。