データベース『えひめの記憶』

えひめの記憶 キーワード検索

柳谷村誌

第二節 中津山塊と四国カルスト準平原①

 今日我らの眼に映る柳谷の自然体は、厚さ二〇〇〇メートル内外の、平行四辺形そのものではない。地塊として誕生後、起ったであろうと思われる隆起や沈降などがつづきながら、絶間なく浸蝕や風化がつづいたであろう。そして彫刻のような地塊は、山なみ・谷すじ・斜面などが一つづきに連なりあっている。全く一つづきのひだのつくりものとなっている。平行四辺形のどの頂点に立って見ても、村ざかいの稜線のどの点に立って見ても、山なみ・谷すじ・斜面が織りあった彫刻の彫りは、柳谷の自然体の個性をはっきりと示している。
 我らのからだが、頭・胴・手足の連なりであるように、柳谷の地塊もまた、いくつかの部分の連なりで、ただ一つの摺曲となっている。仁淀川を界して、二つの部分が連なっているようだ。一つは中津山を頂点とする中津山塊、一つは、西部から南部に亘って長く続く、四国カルスト準平原体(高原部)と、それから出た稜線の群れとである。
 中津山塊は、中津山を頂点とした円錐体の西南四半体で、底面の四半分の円周が仁淀川底線をなしており、四半円錐の二つの切断線が、美川・吾川両村との村ざかい線をなしている。
 一方四国カルスト準平原体は、それぞれの走向に直角に、東方あるいは北方に、たくさんの稜線を出しており、それら稜線の末端が、黒川及び仁淀川の本流の谷底にそれぞれ下りている。この四国カルスト準平原体は、剣山山塊・石鎚山塊と共に、四国地塊の三大尾根と呼ばれ、それから出ている稜線の群れと織りあって、大起伏山地を刻み出しているのである。柳谷の地形は「壮年期」といわれる。二つに区分されている山塊の起伏状態について、その壮年性を考えてみよう。
 (一) 大起伏山地―起伏量が六〇〇メートル以上の山地区。標高は七〇〇メートルから二〇〇〇メートル級。壮年性高山群が競いあい、いずれも二五度から七〇度の急斜面にとりまかれている。斜面には河蝕・雨蝕・風蝕・重力浸蝕などが、さまざまな速度で進行中である。この山地区は一〇〇・五四平方キロ(七九・二九パーセント)である。
 (二) 上位緩斜面ー標高一四〇〇メートルから一七〇〇メートル級の緩斜面。傾斜は五度から一五度級。稜線附近にあって、周囲の急斜面とは明瞭に、傾斜変遷面で接する。大野が原・大川嶺・姫草・地芳峠・姫鶴平。
 (三) 小起伏山地ー起伏量が二〇〇メートルから四〇〇メートルまでの山地区。南東部山地区・南西部山地区。
 (四) カルスト地形―石灰岩からなる台状地形。地表は無数のカーレンや、大小のドリーネ・ウバーレなどで凹凸のある特異の溶蝕地形を示す。
 つぎに傾斜度による区分図をつくり、その分布状況をみよう。三〇度以上の傾斜分布は、中津山々塊の御三戸~奈良薮断層線と、黒川の本流に沿って連続している。仁淀川は御三戸~奈良薮断層線に沿い、仁淀川の横谷部分(中央構造線・みかぶ構造線の走向に直交して流れる)として浸蝕活動を続けてきた。中津山頂から五段高原に連なる石鎚山系の支脈と、さきの断層線に挾まれた地塊胴体が薄く、仁淀川の浸蝕深く、今日の稲村・鉢・磯が成の急斜面を刻み出している。龍宮からアカゴに至る横谷・小黒川山地区は、黒川の強大な浸蝕活動と、横谷小黒川ブロックの岩壁との関係で、三〇度以上の壮年期の相を見せている。黒川の源流に近く急斜面の点在するのは、四国カルスト準平原の隆起後の浸蝕で、カルストから出た稜線地域に、それぞれ急傾斜を刻み出したものであろう。三〇度以上の傾斜度分布のうち、四〇度以上は二・五八平方キロ(二・〇三パーセント)、三〇度以上四〇度未満は、二九・八四平方キロ(二三・五三パーセント)である。二〇度以上三〇度未満の傾斜地は、柳谷地表の大部分を占めている。(七六・一四平方キロ―六〇・〇五パーセント)。からだの健康さをあらわに見せる肌色と言えよう。上位緩斜地(大川嶺台地・姫鶴平・姫草平・五段高原等)の特別地以外は、集落が生れ育つ恰好の土地であろう。わが村の三一集落の傾斜度を見よう。大字柳井川―立野二一度・松木大窪谷一八度・川前二二度・永野一四度・高地三一度・百が市三九度・奈良薮二四度・落出(役場地区三三度・センター地区三三度・広瀬地区二九度)、鉢(磯が成)二六度・稲村二六度)。大字西谷ー郷角二四度・本谷二二度・小村二一度・名荷下三〇度・名荷上二九度・古味二六度・横野二六度・川口二九度・高野三五度・大成二七度・猪伏二七度・中久保二八度・中畑二八度・菅行二九度。大字中津―岩川二七度・中田~窪田~西村一八度・休場一四度・旭一八度・川之内三〇度。二〇度未満の傾斜地は、一五度以上二〇度未満が一二・五八平方キロで九・九二パーセント、八度以上一五度未満が四・六八平方キロで三・六九パーセント、三度以上八度未満が〇・九七平方キロで〇・七六パーセント(姫鶴平の極緩斜面)である。
 次に標高をいくつかに区分してみる。県境の面河川底を二四〇メートルとして、最低のランクを標高二〇〇メートル以上四〇〇メートル未満とする。このランクは、仁淀川全流と黒川八釜渓迄の両岸を含む。旭・川之内はじめ中津はほとんど、落出・磯が成・川前の一部などの集落はこの区域に入る。広さ六・九四平方キロで、柳谷全域の五・四七パーセントに当る。次の四〇〇メートル以上六〇〇メートル未満のランクでは、黒川は横野まで遡る。前のランク以外の集落は大部分之に入る。広さ一三・四四平方キロ、比率一〇・六である。第三のランク六〇〇メートル以上八〇〇メートル未満の区域になると、黒川の数多の支流もその中流に及び、残る集落もみな含まれる。広さ二五・八七平方キロ、比率二〇・四パーセントを占める。つぎの八〇〇メートル以上一〇〇〇メートル未満の区分は、三椏植栽最盛期には、大きいはたらきを現わした区域と思われ、面積三七平方キロ、村全域の三分の一に近い二九・一八パーセントである。一〇〇〇メートルを超え一二五〇メートル未満となると、上位緩斜面も包含され、今日の林地造成に、華々しい増反貢献した区域と見られ、三四・六八平方キロ、二七・三五パーセントの数値を示している。頂上部に迫る一二五〇メートル以上一五〇〇メートル未満の区分は、八・三平方キロで六・五四パーセント。頂上部一五〇○メートル以上山地は、〇・五六平方キロで〇・四四パーセントである。
 以上の傾斜区分・標高区分から、柳谷地塊の特色(自然の個性とも思われるもの)をまとめてみる。わが国の海岸地帯で、海岸に幅狭い平地と、海岸線に平行して迫る断層面がある地域の断面を、ちょうど逆転した傾斜体と言えないだろうか。北条市海岸の帯状平地→立岩川→高縄山頂(九八六メートル)のコースに、黒川の流向が相似している。

起伏断面図

起伏断面図


地形分類図

地形分類図


傾斜度30度以上分布図

傾斜度30度以上分布図


傾斜度20度以上30度未満分布図

傾斜度20度以上30度未満分布図


傾斜度15度以上20度未満分布図

傾斜度15度以上20度未満分布図


傾斜度3度以上15度未満分布図

傾斜度3度以上15度未満分布図


標高200m~400m区分図

標高200m~400m区分図


標高400m~600m区分図

標高400m~600m区分図


標高600m~800m区分図

標高600m~800m区分図


標高800m~1000m区分図

標高800m~1000m区分図