データベース『えひめの記憶』
柳谷村誌
二 禁忌
① 死に関するもの
北枕はいけない。死人を北枕にするから。
御飯の上に箸を立ててはいけない。死人の御飯に立てるから。
着物を左前に着てはいけない。死人の着物は左前だから。
身内の者が死ぬと一年間神社にお参りしてはいけない。
一本線香を立ててはいけない。
一膳飯を食べてはいけない。
骨を渡すときに箸から箸へ渡すので、ふだん箸と箸でつかみ合ってはいけない。
死人を一人で寝かせてはいけない。山犬が食いに来る。
他人の葬式に出た場合、一週間神に参ってはいけない。
友引の日に野辺送りをしてはいけない。友を引くから。
死人に猫を近づけてはいけない。死人が起き上がる。
四十九日が三ヶ月にかかると悪い。早くする。
葬式の時、座敷を掃く場合、ほうきを使ってはいけない。わらで掃き出す。
葬式の時、ものをたくのに、鍋にふたをしたらいけない。
死んだ人と相年ならば葬式に立ち会ってはいけない。
死人には大人も子供も、着物を反対にかける。
初七日まで死人のに使った鍋を用いてはいけない。
洗濯物を北向きに干したらいけない。死人の着物を北向きに干すから。
死体は縁側から出すのでふだん縁側から出入りしてはいけない。
② 日常生活に関するもの
ヘソのゴマを取ると腹がいたくなるので取ってはいけない。
ほうきをまたいではいけない。大きくならない。
元旦の朝は福が来る。だからほうきにふれてはいけない。
山師は仕事始めに「サル」ということばをいってはいけない。
女がシャクシに口をつけたら嫁入りの時に犬にほえられる。
秋ナスビ嫁に食わすな。
人を見送るとき、見えなくなるまで見送ってはいけない。
ほうきで子供をたたくとほうき子ができるといわれるのでたたいてはいけない。
朝、針仕事をしてはいけない。
食後すぐころげてはいけない。牛になる。
焼畑で女の人が火をつけたらいけない。
一升もちはついてはいけない。四九日の時などに一升もちをつくから。
ますをたたいてはいけない。
さわらぬ神に崇りなし。
ヤカンのふたをあけて、お湯をわかしてはいけない。
節分の豆を踏むと足の裏にマメができる。
③ 場所・日時・方向に関するもの
八月一六日に川に行くとエンコが足をひっぱる。
北向きに便所を作ってはいけない。
正月一日に蔵の戸を開けてはいけない。
秋葉様の祭りの日に味噌を焼いてはいけない。
橋の上で杖をついてはいけない。昔、弘法大師が橋の下で寝たことがあるから。
晩に子供を泣かすな。シバ天狗に盗まれる。
便所に唾をはいてはいけない。
三隣亡には旅に出てはいけない。
旧節句に田植えをしたらいけない。
雷がなった時は金物を持つな。
山姥のお産の日は山に入ってはいけない。
水の中で小便をすると水神様の崇りがある。
家の中で口笛を吹くと悪魔が七里近よってくるので、家の中で吹いてはいけない。
正月の一六日に畑をうってはいけない。地獄の釜のふたがあくから。
ハンゲに穴のあいたものを喰べてはいけない。
マケバタケを買ってはいけない病気になるから。
旧正月二〇日の山の神祭りに女の人は出てはいけない。
山で「イタチ」ということばをいってはいけない。
七夕にはキュウリを食べてはいけない。キュウリの水で流れるという。
④ 動植物に関するもの
ハナシバは家の近くに植えてはいけない。仏壇に供えるから。
山の神をまつっている所のそばの木を切ってはいけない。もし切ったりすると命をうばわれる。
イチョウは、お堂・お宮のものだから家に植えてはいけない。
蛇を指さしてはいけない。指がくさる。
庭にビワを植えてはいけない。
蛇をみて「大きな」といってはいけない。太いという。
猿は人間より三本毛が少ないのだから人間の生れ変わり、よって猿を殺してはいけない。
ミソサザエをとってはいけない。
同じ年に生れた家畜がいると子供が育ち負けする。
⑤ 婚姻・出産に関するもの
産後一週間は梅干とおかゆ以外食べてはいけない。
妊娠している時、山の動物を食べてはいけない。
産後は青魚(サバなど)を食べてはいけない。
妊婦は牛の荷綱をまたいではいけない。
彼岸の日は結婚してはいけない。