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柳谷村誌

第二節 消防行政の大要

 人類は火をつくることを発明した。自然発生した「自然の火」からヒントをつかんだのであろう。人類のくらしは一変した。火もまたつぎつぎに、新しい力をつくりだす手がかりとなっていく。
 火をもつ必要と、火の恩恵を悦ぶ人々に、その火の危険とその排除が求められる。人々のくらしに消防という行為が加わったのである。町のくらしには、古くから消防の制度がつくられた。火消役(万治元―一六五八)、十組火消(元禄八―一六九五年)、火事場目付(享保七―一七二二年)などである。しかし山村のくらしでは、隣近所が助け合って、場合場合に力を合わせて、火の危険処理にとりくんできた。
 明治以後政治体制が整うにつれて、消防活動は公義務として社会制度に組み入れられた。まず都市では、「町火消」から発達した「消防組」が整備されていった。やがて公共自治体の整備が進められるにつれて、それぞれの消防組の組織が、地方公共自治体の規模に応じて体制化されていった。
 わが柳谷村では、大正元(一九一二)年九月九日、消防組がつくられた。組頭(村長鶴井淺次郎)・小頭(柳井川五名・西谷三名)・消防手合わせて、七〇人ほどの陣容である。地方自治体の公共活動体として発足した組織づくりであったから、村当局、地元警察官駐在所側の助言指導は適切であり、これに応える組員の活動も真剣であった。以後この組制度は三〇年余りつづいているが、その間、泉松太郎・鶴井輝義・正岡勝次郎・梅木優・大野亀福・西川重一郎らの面々が、組頭・小頭などの幹部として、組員の育成につとめてきた。装備は、手押しポンプ・梯子・飛ロ・まといという揃いで、組員は、紺地に衿、背に文字と赤白線を染めぬいた法被・えどはら・ももひき姿のいでたちである。
 戦時体制に入った昭和一四(一九三九)年四月、消防組は、民間防空自治団体であった防護団と合併して、「警防団」となった。この団組織は、戦時防空活動を主として、昭和二二(一九四七)年までつづいた。戦時防空、防火活動の総元締であるから、警防団長の重責は村長が兼務していた。これまでの消防組の期間は、警察行政の一環を担って、その治安のはたらきを遂行していたものといえよう。
 戦後、従来の中央内務行政の大刷新に基づく、「警察行政の独立―警保局から警察庁へ」に伴って、消防行政は、従来の警察行政傘下から離れて、独立行政機構(消防庁設置)となった。市町村に於ける消防行政は、首長の職務権限に属する一般責任行政事項となった。
 昭和二二(一九四七)年一二月二三日、「消防組織法」が公布施行された。同法において、消防任務は大きく拡大強化され明確となる。「消防の任務は、施設、人員を活用して人々の生命、身体及び財産を、火災から保護すると共に、水火災又は地震等の災害を防除し、及びこれらの災害に因る被害を軽減することを以て任務とする。」と規定する。わが村においては、この消防行政の変革に沿って、「消防組織法」の公布施行と同時に、「柳谷村消防団」に移行した。ついで昭和三七(一九六二)年三月二七日、「柳谷村火災予防条例」同四一(一九六六)年二月二八日、「柳谷村消防団設置条例」、「柳谷村消防団員の定員・任免・服務等に関する条例」、同五二(一九七七)年六月二五日、「柳谷村消防団組織等に関する規則」等を制定して、第一図(柳谷村消防団組織)に見るような組織体制を確立した。その間、鶴井喜久雄(初代団長就任後一二か年)、久保内昭郎(昭和三四年~二六年八月二一日)・土居忠(昭和三六年八月二二日~同三九年一一月一四日)・西川渉(同三九年一一月一五日~同四五年九月三〇日)・正岡秀雄(同四五年一〇月一日~同五五年三月三一日)・西野剛二(同五五年四月一日~今日に至る)の各面々が、消防団長に任命されて勤続している。団組織以来、団活動は時代の要請に応え、益々重要となり、今日の団体制の完備を確立するに至った。
 本来消防活動は、消火・防火活動と、火水災・地震災に伴う人命救助活動を主たるものとしていた。しかし生活の多様化によって生ずる「傷病事故」は、しだいに多くなってゆく。ここに至って、消防活動の任務には、「救急活動」を加える必要が生じてきた。昭和三八(一九六三)年の消防法の一部改正(救急事務の追加)がそれである。
 わが村は、同法改正による救急業務追加義務の指定町村ではない。しかし救急移送を要する事故は起り得る。幸に本郡五か町村は、かねてから「生活環境事務組合」を設立して、各種の生活環境事務を遂行している。この組合の業務に、救急業務を行う消防署を追加設置することは、適切な措置であった。昭和五二(一九七七)年六月二二日、本村議会は、「上浮穴郡生活環境事務組合規約の一部を改正する規約」を議決した。議決事項はつぎのとおりである。

  上浮穴郡生活環境事務組合規約の一部をつぎのように改正する。
   第三条に次の一号を加える
   六 消防組織法及び消防法に定める消防事務 
 
 ここにおいて、わが村における消防活動は、柳谷村消防団と上浮穴郡消防署(上浮穴郡久万町大字上野尻九〇番地)の連繋により、「救急活動」は上浮穴郡消防署常駐の「救助隊」の活動によって遂行されることになっている。

柳谷村消防団組織図

柳谷村消防団組織図