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柳谷村誌

第八章 貯蓄

 いのちの保持、くらしの持続のための「貯える」本能。再生産のための「備える」衝動。我々人間の「試みる」行為の大部分が、これらで占められているように見える。我々は今まで、食料をはじめ、あまたの生産資料の貯えに、配慮をつくしてきた。今後はこれらに加えて、「知的資料」の貯えによって、「未来の意義」を捉えようとするだろう。
 人々のくらしを古く遡るほど、貯える行為が物中心である。農家の家のたたずまいに、土蔵・納屋・俵戸棚・地蔵等の建築装備がうかがえる。この物中心の貯えの気くばりが、貨幣経済生活期に入って後も、貨幣死蔵(たんす貯金)を必要以上にする習性がつづいていた。
 明治以後、貨幣流通が経済活動の主軸となる。貨幣所得者は、所得を消費と貯蓄に二分する。更に貯蓄部分をいわゆる貯金と、利子生み資産への投資とに配分する。所得者の貯蓄に因る資本蓄積が、社会的効果を大きくもたらすことになる。資本制社会の充実のため、国民大衆の貯畜性預金を吸収する政策を制度化することに、政府は具案をめぐらしてきた。「利子」によって国民の老後の保証や、遺産を殖やす貯蓄心を魅力化した。利子の意味を、「所得不消費」に対する報酬であるとか、資金使用に対する使用料とか言われるが、いずれにしろ、「資本運動」が生んだ「剰余価値」であると見られよう。
 明治以後の、国民の貨幣所得貯蓄に応じた「貯蓄制度化の跡」と、今日のわが村における「貯蓄施設」の大要を第二・三表に表示する。

国民の貯蓄行為に応ずる社会施設

国民の貯蓄行為に応ずる社会施設


わが村における貯蓄施設の大要

わが村における貯蓄施設の大要