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わがふるさとと愛媛学Ⅳ ~平成8年度 愛媛学セミナー集録~

◇見えない文化に形を与える

矢野
 今、オリジナル性というか、伝統、歴史性というか、それらにこだわったら、何もできないという部分があるというお話でした。宇和にある、例えば学校なども、そのオリジナルはもっとよそから来たものであるかもしれないとか、ここにある生活風習がもっとほかから流れて来たかも分からないとかいうふうな形になっていくと、オリジナル性というのは、問えなくなる。そこでまたルーツ探しをすれば、何かここの文化の持っている深さ、それが新たな視点で見えてくるのではないかという御示唆と受け止めました。
 ものを見ていく場合に、やはり小さな町というのは、見えない文化はあるけれども、それに形を与えていくことによって、さらに幅広く皆さんに提示していくことができるのではないかと思います。あるいは人を呼ぶことができるということで、形をいかに与えるかということが、もう一つ大きなポイントになってくるように思います。
 私も地域にかかわって、町づくり、村おこしなどで、その地域に伝統的に存在している内容に形を与え、「これが宇和なんだ、これは明浜なんですよ。」という形にしていくというような地域デザインをやりました。
 結局、形を与えていって、また町をつくって、文化創造をしていく際にオリジナルだけでなくて、もっと幅広い視点で掘り下げて見ていこうということだと思います。学際的と上田先生が言われましたが、愛媛学も従来から学際的研究ということを掲げており、さらに意を強くするところがあります。
 掘り下げが考古学者だけの専門性ということではなくて、いろいろな観点から地域を見つめ直していく、そういう形で愛媛学が、これからまた深まっていく、そんな感じを受けました。
 そういう形で、自分たちの足元を一回、学際的に見て、そして宇和のイメージを、これからどのように組み立て、どういう文化都市にしていくかというふうな形の創造性の中で、新しい伝統や、過去の歴史が保存されている文化の町「宇和の里」のあり方が見えてくるような気がします。
 対談講演は以上で終わりたいと思います。非常に広範な視点で貴重な御講演をいただきました上田先生に、お礼を申し上げます。ありがとうございました。