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わがふるさとと愛媛学Ⅴ ~平成9年度 愛媛学セミナー集録~

◇石屋の役割

 じゃあ石屋としてどうしたらいいのかというと、長く使うんだから、長くもつような、あるいは、後の世の人にも通用するような施工をしなければいけないのではないかと思ったりするわけです。石の場合は、後の世というのが、いわゆる何十年単位ではなくて、もっと長いんです。13年くらい前ですけれども、ギリシャやエジプトへ行った時に、あの辺のピラミッドにしても何にしても、何百年ではなくて、何千年単位でそういうものが残っていた。で、それを見て、石屋として、まあ何千年単位とは思いませんけれど、少なくとも百年単位で物事を考えなきゃいけないのかな、施工においてもデザインにおいても、後の世の人にも通用するようなデザインであったり、そうでなくてはならないのかなということに気づきました。
 皆さんももう御存じのとおり、大島石もかなり掘り出されて、特に伯方(はかた)島の方から見れば、かなり山の緑が少なくなっております。かく言う私も、そういうことの張本人の一人であるわけなんですけれども、せっかくの資源を、宮窪の、あるいは大島の産業として有効に使っていくことが、これからも長く石屋を続ける秘けつかなと、こう考えたりしています。そこで、今も岡田さんが言われましたように、大島の石の中で墓石になるのは掘り出した石のわずか10%ほどで、あとの90%はそれ以外の使われ方か、あるいは捨てられるというふうなことですので、そういうところにも目をつけて、捨てられるような石から、石彫サークルでもやっていますけれども、小さな物を作ったり、あるいは大きなモニュメントを作ったりしています。
 今はありがたいことに、昭和40年(1965年)ころからは石屋も機械化されて、今までできなかった加工方法ができるようになりました。たとえば、国道(317号)からこの石文化伝承館に入ってくるところに、宮窪町観光案内とかいうのがあります。あれは3cmの厚みの1m50cm×2mあまりの広い板石を2つ合わせてああいうものにしてあるんですけれども、以前には、とてもじゃないけれども、ああいう加工はできなかったんです。それが今ではありがたいことに、そういう加工ができる時代になっております。それで、石が幅広く使えるんです。機械化とコンピュータ化で、たとえばデザインにおいても、以前はプロのデザイナーじゃなかったらいけなかったのが、今はありがたいことに、素人でもデザインができるとかいう時代ですので、そういうふうなことにも取り組みつつあります。とにかく、石は長持ちするということを踏まえて石屋をしなければいけないということだと思っています。