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わがふるさとと愛媛学Ⅶ ~平成11年度 愛媛学セミナー集録~

◇アジアにおける「観光大爆発」

石森
 先ほども申しましたように、これまで日本は、経済的に大きく発展してきました。そして、その最大の理由は、日本が工業立国と貿易立国に成功したからであります。
 しかし21世紀の日本は、もはやそういう状況ではありません。貿易にしてもかなり厳しさが増すでしょう。なぜかと言いますと、日本人労働者の給料が世界的にも高くなったからであります。これは、日本人の生活水準の向上にはプラスでした。しかし、工業立国、貿易立国という視点からすると、マイナスの作用として働いた。すなわち、日本は、品質のより良い工業製品をより安く世界に提供することで、工業立国、貿易立国として勝ち続けてきました。言い換えるならば、いかに高品質の製品を作ってもそれを安く提供できなければ、他国との貿易競争には負けます。このことからすると、給料水準が高くなった日本は、今後は工業立国、貿易立国ともに難しい局面を迎えると思われるのです。
 さらに、21世紀の日本は人口が大幅に減ります。現在の人口は約1億2,500万人ですが、ところで皆さん方は、例えば西暦2050年にはこの人口がどれくらいになると思われますか。研究者や研究機関によって数値が異なるのですが、1億人から8,000万人くらいまでに減るという予想が出されています。
 このようにお話しして参りますと、「日本の未来はないのか。」とお考えになられるかもしれません。しかし、必ずしもそうではないのです。確かに、定住人口は減少しますが、日本を訪れる外国人観光客や、四国あるいは砥部町を訪れる人々、いわゆる交流人口を今まで以上に増やすことによって、地域の活性化や国の活力を維持することは可能なのです。そして、この交流人口の視点からすると、実は、アジアにおいて大きな変化が起ころうとしています。
 わたしは、21世紀、特に西暦2010年代に、アジアで大きな観光大爆発が起こり、アジアから海外に出る人が一挙に増えると考えております。しかし、この観光大爆発という現象は、すでに日本が経験しております。昭和39年(1964年)、すなわち東京オリンピックが開催された年ですが、この年に日本政府は、観光目的で海外に行く日本人に、USドルで500ドルに限り外貨の購入を認めました。では、昭和39年当時、どれだけの日本人が海外へ出たかと言いますと、業務渡航なども含めて約12万8,000人でありました。それが、今年(平成11年)は恐らく1,600万人を超えるでしょう。これはどの増加はだれも予測できなかった。そして、これと同じようなことが、21世紀のアジア諸国で起こると思われます。アジア諸国で経済が発展すると、そこから海外に旅行する人が大量に増える。ですから、21世紀、四国や愛媛県さらには砥部町に、アジアからの数多くの観光客が訪れる可能性があるのです。 21世紀にはこの砥部町においても、交流人口を増やすことによって町の発展を考えることが、ぜひとも必要になってくると考えております。