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臨海都市圏の生活文化(平成7年度)

2 「珍味」、瀬戸内の隠し味

 酒のつまみ、子供のおやつとして広がっている「珍味」。本来は、保存食品としての特性が強かった珍味も、最近ではおいしいヘルシーフードとして見直(みなお)されてきている。
 珍味はもともと、カラスミ(ボラ・サワラなどの卵巣を塩漬(づ)けにし、それを乾燥させたもの)など珍しく美味な食べ物を指し、歴史をさかのぼると、公家や武士などごく限られた人々だけが食するものとされていた。明治時代になって、ようやく一般庶民の口にも入るようになり、愛媛ではこの大衆向けのものが、明治から大正にかけて瀬戸内海の豊富な小魚や小エビなどを使って、松前(まさき)町や松山市三津浜で作られ始めた。
 この項では、町内に20の海産物加工業者が操業し、年間の売り上げが約200億円、全国シェアの約80%を占め、「小魚珍味」の生産日本一を誇る伊予郡松前町を舞台に、同町の地場産業としての珍味と、それとかかわりながら生活する人々のくらしぶりを探ってみた。