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愛媛県史 社会経済1 農林水産(昭和61年1月31日発行)

第二節 農作物


 『親民鑑月集』は二章の「四季作物種子取りの事」で、一月から一二月まで各月ごとに(一)植えるもの、(ニ)収穫して食べる(利用する)もの、(三)種子を取る、植物について詳述している。その数は樹木類を除き約二〇〇種類に達するが、この収穫して利用する植物、種子を取る植物の総てが労働の対象となっていた「作物」ではなく、明らかに採取して利用していた野生植物と思われるものが数多く含まれている。この二〇〇種類の植物から、肥培管理の対象となっていた農作物を正確に抽出することは極めて困難であるが、植える欄に掲載されていないものを野生植物として除き、また植える欄には見当たらないが、他章の記述から明らかに栽培されていたと思われるものを加えて整理すると「農作物」と考えられるものは次の約一一〇種類となる。(この分類には多少無理がある。)

         農作物の種類

 1 穀 類 稲(早生・中生・晩生・畑稲) 麦(裸麦・大麦・小麦) 秬(小秬・高秬・唐秬) 粟(早生・中生・
         晩生) 稗(早生・晩生) 蕎麦 葺草(穀粒を利用)

 2 豆 類 高野菽(そら豆) 大角豆(一六大角豆・一八大角豆・晩大角豆) 大豆(春大豆・夏大豆・晩大豆)
         小豆(早小豆・小豆) 刀豆・庵豆・垣菽・かつら菽

 3 いも類 里芋(八花芋・白唐芋・真芋・九芋・ほう子芋・黒唐・柄白芋・大芋・つじ芋・永芋・実赤芋・はす芋)
         ほど(ほどいも) 野老(根茎を食用) 琉球芋(かつら芋=さつま芋)

 4 野菜類 (1)茎葉菜類 鳳連草・夏菜・ 菜・小菜・高菜・葱(千根、一文字)・分葱・胡葱・蕗・娵か萩(よ
                  めな)・薺・萱草・はこべ・苣・芥子菜・韮・筧・紫蘇・芹・野蒜・藜・はうふう(ぼ
                  うふう)・あさみ(あざみ)・箒草(葉を食用)・鶏頭花・はたな・真菰(若芽を食用)・
                  まこも筍(若芽を食用)・みようが(茗荷)・菊(葉を食用)・くこ(葉も食用)・うこぎ(同)・
                  むくげ(同)
         (2)果菜類  茄子・胡(期)瓜・瓜・かも瓜・れいし(にがうり)・菱
         (3)根菜類  大根・人参・蕪・牛蒡 (山ごぼう)・らんきゃ(らっきょう)・生姜・蒜・鳥芋・蓮(れ
                  んこん)・百合(鱗茎を食用の場合は葉茎菜類)
         (4)香辛料類 唐芥・蓼・山枡(椒)
         (5)菌  類  椎茸

 5 特用作物 桑・楮・漆・茶・櫨(野生か栽培か不明)・藍(唐藍)・紅花・苧(からむし)・きはた(木棉)・藺・
         菜種・唐胡麻(ひま)・胡麻・荏(えごま)・こんにゃく・とろろ(とろろあおい)・くこ・積随子(ほ
         るとそう)・花苧(いちび)・瓢(ひょうたん)・朝顔(薬用)・昼顔(同)・夕顔(葉は食用)・菖蒲(莚
         材料、馬の飼料)・三苓(つごも)・蒲(莚材料、飼料)・福寿草(薬用)

 6 果樹類 柑類(柑子・蜜柑・だいだい・花柚・九年母(甫)・かぶす・実柚子・柿・梨(青梨・秋梨)・桃・蒲萄・杏子・
         栗・楊梅(やまもも)・梅

 以上はすべてが三間地方で栽培されていた作物ではなく、筆者が見聞した他地方のものも含まれていると思われるが、大半は同地方の作物であったと見ることが出来る。また特用作物、果樹類の中の特殊なものを除き、ほとんどのものが、全農村に共通する普遍的な作物であったと理解してよいであろう。