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久万町誌

1 まじない

ア、股や喉のリンパ腺がはれた時、杓の柄をはれたところに当て、反対の杓の中へやいとをすえる。やいとをすえる人が「そこらにヨコネはおらんか」といいながら、きょろきょろして、捜すまねをする。すえてもらっている人は「おらん、おらん」と答える。これでリンパ腺のはれはすべるということである。
イ、歯が痛む時、「天竺のコウカの山の青き虫、根は食うとも葉(歯)は食うな。あぶらおんげんそわか、あぶらおんげんそわか、あぶらおんげんそわか」と唱える。すると歯の痛みがとまるということである。
ウ、まむし(はめ)にかまれないようにするためには、「天竺のリュウシャ河原に昼寝して、チガヤの芽に縫い通され、ワラビの恩を忘れたか。あぶらおんげんそわか。(このところだけを三回くり返す)」と唱えながらワラビで身体をこするとよい。
エ、子どもが夜泣きをする時、「天竺の古竹藪の古狐、昼は鳴くとも夜は鳴くな。あぶらおんげんそわか。(ここは三回くり返す)」と書いて、子どもの枕の下に敷いて寝させると、夜泣きしなくなる。
オ、妊婦か産気づいたとき、早めに産まれさせるために、「へたな大工がこしらえた馬ぐわ、つかがはずれて子が抜けた。あぶらおんげんそわか。(ここは三回くり返す)」と唱えるとよい。
カ、いもち病が稲についた時、「一〇月の亥の子がこんうちに、いもちつくとはだれが言うらん。あぶらおんげんそわか。(ここは三回くり返す)」と声高く唱えると防除できる。
キ、やけどした時、「猿沢の池の大蛇かやけどして、水におぼれて火にやけた。あぶらおんげんそわか。(ここは三度くり返す)」と唱えながら、ほうちょうをやけどのところで回すとはやく直る。
ク、てしろがおきた場合、「カズネ山の恋男、まねいてもまねいてまだこん」と唱えながら、東を向いて手招きをすると痛みがひく。これは女の場合で、男の場合は、「……恋女……」といえばよい。
 また、男におこった場合は女の末っ子に、女におこった場合は男の末っ子に、鍋、したみなどのつるに手を通して糸で手首を縛ってもらえば直る。
ケ、しびれがきれた時は、つばを指先につけて十の字を書くとよい。
コ、子どもができた後、産婦にちぐさ(乳のはれる病気)がつくと、「鯉」という字を乳の上にできるだけ多く書く。そうすればちぐさは直る。
サ、乳歯か抜けた時、上の歯であれば床の下に投げ込んで、「ねずみの歯より早くはえ!」と唱える。また、下の歯であれば屋根に投げ上げて、「雀の歯より早くはえ!」と唱える。そうすると、永久歯が早くはえる。