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久万町誌

1 妊 娠

 婦女子が月のものを見なくなって妊娠したとなると、出産までにはいろいろな祝いの行事のほかに、食事から立ち居ふるまいにまでも、ずいぶんと気をつけたようである。これらは、現在にもそのままに残っているものが多い。
  ア 帯とり
 妊娠後、五か月目になったときの最初の戌の日に、胎児を保護するために腹帯を締める。その腹帯を岩田帯という。この行事はその形は変わっても現在も行われている。
 この日、妊婦の里方より紅白の晒布、それぞれ八・五㍍(一反)をお祝いとして持参する。この晒を腹帯として使用するのである。とりあげばあさん(現在は助産婦)が胎児の位置を診断したり、胎児の健康状態などをみて、腹帯をした。腹帯は最初に赤い布を使用し、洗濯のときに白い布を用いた。また、布の端には犬の字を書いておいた。犬のお産が安産であるところから、それにあやかって戊の日を選び、犬の字を書いておいたりしたものである。
 妊婦方では里方から来た者やとりあげばあさんに酒食と赤飯でもてなしをした。もちろん神だなへも赤飯をそなえて安産を祈願した。
  イ 食養生
 妊娠中の食養生については、かなりきびしかったようだ。
 三か月以内は形の整わないくずれたものは食してはならない。これは胎児の形の整わない時期だから流産につながるし、胎児が整わない原因とも考えられていた。また刺激物も食べてはいけない。流産の原因ともなる。
 五か月以内は、たこやいかのように骨のないものも食してはならない。妊娠中は砂糖分をなるべくさけた。これは出産後、乳の出を悪くするもとである。兎肉も三つ口の子供ができるといって食べなかった。
 また、いろいろなできごとを見る場合も次のように気を配った。
 火事は見ないこと。もし見たときは徹底して見ること。見るときには、自分のからだのどこか一部分でも指で押さえて見てはならない。もし指で押さえていると、その押さえていた部分にあたるところが、胎児に「赤やけ」(赤いアバタ)としてあらわれる。
 葬式を見てはならない。もし見るときは火事と同様なことに注意しなければならない。でないと新生児のからだに「のぶやけ」(黒いあばた)ができるといわれていた。
 すべて何事も途中でなげだしてはいけない。そうでないと、できた子どもが根気のない子どもとなる。また、美人の写真や絵を見ることはよい。などとされ、新しいかまどで火を炊くと三つロができるというのでこれもしなかった。