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柳谷村誌

第二節 農本的封建社会の構造特質

 この期の社会のしくみを考えるについて、はじめに、この期に先行した期、後続する期との比較を交えながら、農本的封建社会期の特徴とも思われるものをとり上げて、概観を試みよう。

 統一社会性 

 (封建的土地所有者である幕府藩主と、農奴的農民とがつくる共同社会)王朝期はじめ武家期においても、統一国家社会の姿を保っていながら、社会しくみの要素には、さまざまな乱れを発生させる要因を含んでいた。そのため戦国争乱期という乱れを経過したのである。今分散した社会力を収集統一して、中心に統一力をもち、全体の釣合いの整った社会に結着させたのである。

 農本性

 この期に先行した期は、もとより農耕社会であった。この期、その継続としての農耕社会であることはもちろんだが、前の期の農耕生活様式は、その目あてを世間=社会におくということより、個々の身内=家族においていた。この期に続く次の期すなわち現代は、農耕・農政の目あてを、国家社会から更に国際社会の要求に応ずる「交易」にまで拡げられていると考えたい。それでは、この統一封建社会期の農耕は、社会の仕組を支える中心の役割を背負う点に、その目あてがおかれていた。だから農耕を重んずる「重農性」というよりも、農耕を中心とする「農本性」と名づける呼び方を選びたい。この期の農耕活動は、村びとすべてに亘って、社会の金銭に関わるすべてのこと、仕事の選び方に関わるすべてのこと等、一切を引きまとめて背負わせている。例外は何一つ認められなかった。

 身分性 

 士農工商の四民性である。少しもゆとりを認めない身分で取締る仕組である。各個人に背負わされる社会的役割は、きちんと決まったものである。うちの生業を必ず引き継ぐこと。人柄・生れつきの力を伸ばすことは認めない。そして、倹約を強制する。仕事の稼ぎ高を上げること。本当にきびしい。このように一人一人の社会的役割をみごとに果させる。正に総力の結集である。この国策の焦点はなにか。

 閉鎖性 

 徳川幕府は二六〇年間、諸国との交際をしなかった。鎖国という世界に未だ例のない政策を押し通した。国内のすべての眼を、内にだけ向けさせるやり方であるから、内に向って集中する民族性はやしなわれたと見られる。一人々々の個性は、内に蓄えられて、次の期に芽を吹き枝葉が繁り、実を稔らせる活動に向けられるしくみになったと言えよう。

 防衛性 

 幕府―藩―郷―百姓、すべての社会活動は、幕藩を骨組みにした社会の仕組を、永続させる点にある。外、鎖国を以て外患を防ぎ、内、幕藩組織を以て内政秩序を強化する。すべては防衛の一点にあった。