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わがふるさとと愛媛学Ⅱ ~平成6年度 愛媛学セミナー集録~

◇今見直される手漉き和紙を、未来に残すには

 私も、和紙に対して非常に愛着心のある一人でございますので、最後に、和紙をどういうふうに未来に残すべきかについて、述べさせていただきます。
 この地方では、手漉き和紙をする家が、明治末から大正にかけては760戸ございました。それが、今から20年ほど前の昭和43年には40戸になりました。そして現在は14戸、開店休業が1戸ございますので、それを除きますと13戸になります。
 このような衰退は全国的なものでありまして、当地方だけとは言えません。原因は、いろいろあると思います。
 たとえば、畑の作物に使う温床紙という紙がありましたが、これはビニールになってしまいました。生活の近代化によって、障子紙がなくなり、ガラス障子になりました。雨が降っても、番傘をさす人は非常に少なくなり(ないと言ってもいいでしょう)、洋傘に変わりました。書物類も、昔は和綴(とじ)の和書がありましたけれども、今は洋書になりました。
 また、職場に対する意識も、零細企業よりも大企業のほうがやりがいがあって魅力があると考える人が多くなってきており、これも原因の一つかも知れません。
 しかし、やはり初心忘るべからず。ここまでになった宇摩地方の製紙。これは手漉きがあったからこそだということを、忘れることはできません。まだまだこの伝統的な美しい和紙の生きる道は開けるものだと、思っております。日本人としてこれを忘れてはならないと、強く私は信じている次第でございます。
 以上、この4点について私の考えを申し上げ、御参考に供したいと思います。 
 最後になりましたけれども、和紙について勉強してみたいと言われる方に、関係する文献を2冊ほど紹介させていただきます。一つは、伊予三島市のロータリークラブが昭和39年(1964年)に出した、森実善四郎さんの『紙と伊予』という冊子です。これは素晴らしい冊子でして、もし御家庭にございましたら、大事にしていただきたいと同時に、もう一度目を通していただきたい。もし、ロータリークラブのだれかがいらっしゃいましたらお願いしたいのですが、この『紙と伊予』を、昭和39年以降の統計資料も中へ入れ、記事も充実して、再版していただきたいと思います。この本はもうほとんどないようですので、是非やっていただきたい。
 それからもう一つは、村上節太郎さんの『伊予の手漉き和紙』です。これにも、森実善四郎さんの『伊予と紙』がかなり引用されておりますし、村上節太郎さんが調べられた、愛媛県の和紙の歴史と今後のあり方というのが十分に書いてありますので、もし詳しく勉強される方がございましたら、こういう本を参考にされるといいと思います。
 以上で、私の発表を終わります。御静聴ありがとうございました。