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わがふるさとと愛媛学Ⅱ ~平成6年度 愛媛学セミナー集録~

◇古紙リサイクルの現状

 まず、古紙の現状と、そのリサイクルの問題から、話を始めさせていただきます。
 御存じのとおり、日本は紙の生産量、消費量が非常に多く、生産量はアメリカに次いで第2位、一人当たりの消費量は世界で3番目、約230kgということで、世界で有数の国でございます。また、利用率(作られる紙の何%が古紙を利用しているか)が53%、古紙の回収率(国内で使った紙の何%が回収されているか)が51%ということで、現在では世界でナンバーワンを誇っております。
 ただし、日本の古紙の利用は、省資源、低コストという経済性の観点から始まっておりまして、ゴミの問題とか地球環境の問題というのが先に立って始まった欧米とは、ちょっとスタンスが違うというふうに考えてください。
 もともと高い利用率ですが、リサイクル法ができて、本年度中にさらに55%まで高めるという通産省の通達があったんです。今のところちょっと難しい状況ですが、世界のトップ水準を維持しているということに変わりはございません。日本のあとはドイツ、イタリア、フランスと続いております。したがって、紙を再度生かすという技術において、日本は世界ナンバーワンの技術を持っている国だということで、誇りに思います。
 また、回収率は、理論上は最高が65%と言われております。生産された紙の中で回収される率ですから、たとえば書類で保存されたり、紙と他の物との化合物であったりして、どうしても回収できないものがあるわけですから、回収率が51%というのは、非常に高い数字であると認識していただきたいのです。参考までに、他の国と比較してみますと、ドイツが47%で2番、アメリカが37%、お隣の中国は28%となっております。
 では、製紙の原料に注目して、話を進めさせていただきます。
 日本では、古紙の使用量が年間平均だいたい1万5,000tと言われております。これは、計算しますと、30億本の木の代わりに古紙を利用しているということになります。この数字は時々引用されますが、古紙の利用によって、それだけの本を保護する効果があるというふうに理解していただきたいと思います。
 古紙以外の原料として何を使うかと言いますと、パルプです。これは木から作ります。よく、紙を作るために森林を無造作に切っているということが、一部に報道されることがありますけれども、実際に使われる木は、一つは天然の低質材、つまり曲がった物とか割れた物、松食い虫の被害にあった物とか、いわゆる木として使えない、製材として使えない物を使うということと、製材の廃材を使っています。それともう一つは、計画的に植林した人工林。ちょうど、畑に作物を植えて食べるのと同じように考えていただいたらいいかと思うんですが、一番育ちやすい木を植え、それを伐採しているので、パルプについても、ほかに利用できないものを無駄にしないで利用するということで、むしろ地球環境の保護にも役立っていると言われています。ですから、各製紙メーカーも、他の国、7か国に、大型の人工林のプロジェクトを組みまして、人工林の比率も23%ぐらいまで上げてきております。
 このように、日本は古紙の利用が上手だと言われておりますが、では私たちの地元伊予三島はどうかということで、調べてみました。実は私も、伊予三島の現状を知らなかったんです。
 伊予三島では平成3年10月から、集団回収に対する補助金制度というのができております。平成3年が64団体で349t、平成4年が72団体で789t、平成5年が70団体で736tという実績が上がっております。集団回収をしている団体のうち57団体が、各地区の愛護班、PTA、スポーツ少年団などです。つまり、子を持つ親のボランティア活動によって、この地域の古紙回収が支えられているということです。
 ところで、789t人口を約4万人として、一人当たりの平均的な紙の消費量230kgを掛け、その値に日本の平均回収率(約51%)を掛け、さらに集団回収比率(約20%)を掛けて計算しますと、(統計的な数字ですから、多少のバラつきはあるかも分かりませんが)だいたい938tになりますので、伊予三島市の789tという数字は、全国平均に比べて若干下回っているという状況です。紙の町、四国有数の経済都市と言われ、一人当たりの所得もかなり高い地域でありながら、ここで住んでいる人たちが、その元である紙を大切に扱うという部分では、もうちょっとかなという感じです。
 また、別の視点でこの789tという数字を見ますと、地元の大手メーカーが消費する古紙の半日分にも満たない数字なんです。受け皿はしっかりあるのに、まだ平均並みの回収がなされていないのは、非常に残念なことだと思います。
 たとえば、人口4万人の都市で、先程述べた限界回収率65%を目標にして最大限集めた場合には、年間で約1,200tが可能ということになります。このような明確な目標を出して、各地域でいろんな回収方法をやったらどうかと思います。
 全国各地の自治体でも、現在いろんなシステムで回収がなされております。ある地域では、カープサイド(道路の縁石のそばという意味)回収といって、ゴミを出す日に、ゴミと紙、ビン、鉄というふうに市民に分けて出してもらい、それを自治体が回収するというシステムをとっています。この方法は、回収率が非常に高くなりますが、一人一人、各家庭の協力が不可欠です。また、悲しいことですけれども、このシステムは特にゴミを有料化した場合に成功するらしいんです。「ゴミとして出せばお金がかかるが、きちんと分けて資源として出せばお金がかかりませんよ。」ということで、ゴミの減量化と、資源の有効な再利用ということになりますので、この形を基本にして、高知スタイルとか、宮崎システムとか、各地方でいろんな方法が工夫されているようです。
 宇摩地方でも古紙の回収率を高めることができるよう、自治体でも知恵を出していただき、この地域に最も適した方法をとっていただきたいと思います。少なくとも「紙を愛する文化、大切にする文化」の原点であり、だれにでもできる一番入りやすい所から取り組んでいただければ、古紙を扱う者としても、誇りをもって仕事にあたれると思います。