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わがふるさとと愛媛学Ⅱ ~平成6年度 愛媛学セミナー集録~

◇まちづくりに取り組む若者の気持ち

 次に、この地域に住む者の視点で、「まちづくり」について考えてみたいと思います。宇摩地方のまちづくりは、やはりもっと徹底して「紙」にこだわったほうがいいんじゃないかなという気がいたします。
 私の娘が通っている中学校では、地域文化を生かした学校づくりということで、伝統工芸の水引細工を体験学習したんです。水引業者の方が手伝い、全校生徒が参加して、松の葉っぱを作ったり、竹の葉っぱを作ったり、梅の花を作ったりしました。私の娘も二人参加して、初めて実際の水引細工に触れたということで非常に喜んでおりました。
 この話を聞いて、私は非常にびっくりしたんです。実は、私の家内の里がその水引メーカーでございまして、娘たちは月に何度も行っているんです。常にその水引とは接していたはずなのに、初めて体験したということで、私自身非常に愕(がく)然としたんです。
 皆さんの回りにも、そういったことは多かれ少なかれあるんじゃないかなと思います。「知っているはず、分(わ)かっているはず。」が、実はそうではなかったということが、多いような気がいたします。
 ですから、いろんな意味でもう一度徹底的に紙というものにこだわってしまえば、そこからまた新しいものが生まれていくように思うんです。たとえば、一例として毎年春に行われます町民運動会、あれは紙のための「紙民(しみん)運動会」に変えてみるんです。競技に使う道具はすべて紙で作るとか、道具作りの段階から、子供たちに参加させる。こういった形で紙と触れることにより、たとえば、強い紙と弱い紙の違いとか、いろんなことがわかってくるのではないでしょうか。紙の特徴がわからないと、和紙と洋紙の差もわからないし、和紙の本当の良さなんて当然わからないのではないか。五感というのは非常に素晴らしいもので、そこから次のヒントが出たり、新しいものを創作することができるわけですから、子供のころから育ててやる必要があると思います。
 我々もそうですけれども、子供たちは、紙というものを、本などの文字や絵を印刷するための道具としてしか見ていません。素材を手で感じたり、いろいろ遊んだり楽しんだりする機会は折り紙ぐらいで、ほかにはほとんどないような気がします。日本で一番紙の種類の多い町に住んでいながら、それに接する子供が非常に少なく、それを一緒に楽しむ親も少ないという状況だからこそ、徹底的に「紙」にこだわって、いろんなイベントなどを企画していけば、非常に面白いものができるのではないかと思います。
 私たちも、青年会議所、商工会議所青年部をはじめ、若者の団体が、いろんなゲームをここから発信しようということで、夏に日本丸が来た時に、大型のジグソーパズルを作って、ギネスに挑戦というのをやってみようかという話もありました。実現はしなかったんですが、常に紙にこだわりながらまちづくりに携わってきております。