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わがふるさとと愛媛学Ⅱ ~平成6年度 愛媛学セミナー集録~

◇歴史を生活に根づかせるまちづくりを

 ちょうど今、私たちの銅夢物語新居浜市民会議では、新居浜の銅という素材をテーマに活動を行っております。伊予三島や川之江、こちらの圏域には、紙という素材があります。お互いに似通っている点もありますので、そのことについても、ちょっとお話ししたいなと思います。
 新居浜の場合、「銅」と言っても、作って出していただけで、300年余りの歴史があるにもかかわらず、現在は、銅に関連する産業も鉱源も残っていません。「そういうのっておかしいね。何か始められないかな。」と言って始めたのが、私たちの銅夢物語新居浜市民会議で、今年3月に発足したばかりなんです。銅という素材を、どこまで私たちが愛し切って頑張れるかにかかっておりまして、今、金工(きんこう)(金属に細工を施す美術工芸)の作業(鍛金(たんきん)、彫金(ちょうきん)、鋳金(ちゅうきん)、レリーフなど)を20人余りで始めています。何年か後に工芸家がでるかわからないんですが、触ったことのない人たちがやり始めて、5年10年と続けた時に、工芸家のはしりにでもなれば成功だなというスタンスで始めています。
 そんな新居浜に比べると、こちらには非常に歴史がある。現在、紙漉きをできる方がいらっしゃるというのは、新居浜からすればうらやましいな。見に行って、実際に継承できるものがあるというのは、とても素晴らしいなと思います。そんな歴史があるのだから、もっと皆さんの生活の中に、文化として根付いていかなければもったいないなとも思うんです。先程、毛利さんが「和紙の製造元が13戸だ。」とおっしゃっていましたが、それを残していくためには、今動き始めるしかないんじゃないかなと思います。
 私たちの仲間の間でも、「まちづくり」という言葉をよく使いますが、まちづくりというのは、言い直せば「人づくり、自分づくり」ではないかと思います。自分の意識をちょっと変えて、今住んでいる町に目を向け、「この町も悪くないな、この町にくらして良かったな。そして子供たちには、この町で大きくなっていってほしいな。」と思えるような町にしていこうというのが、本当の意味のまちづくりだと思います。
 ですから、そういうスタンスで、皆さん一人一人が、もう一度紙という素材を愛していくことによって、いいまちづくりになっていくんじゃないかなという気がします。