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わがふるさとと愛媛学Ⅴ ~平成9年度 愛媛学セミナー集録~

◇地域おこしにお祭りを

 地域の方たちが、「これではいけない、なんとか昔栄えた夢をもう一度味わおう。」と、地域より外に出た人たちに招待状や案内状を出して、第1回ふるさと祭りを昭和58年(1983年)、旧暦2月の縁日を新暦3月の第2日曜日に日を改めて催し、現在に至っています。
 お祭りでは、餅(もち)まき、ゲーム、カラオケ、バザーなどをしています。餅まき用に使われる餅米や五穀(ごこく)餅に使われるヨモギ、トウキビ(トウモロコシ)、タカキビ、アズキなどの材料は、全部地域の方々が心を込めてつくった物ばかりです。
 餅つきも、このごろは機械を使う家庭が多くなりましたが、このふるさと祭りでは、昔ながらのうすにきねを振りながらつきあげております。何年か前に、婦人会で五穀餅をつくようになってから、その餅を楽しみにして、予約まで受ける人気になりました。地域の人たちも、この時ばかりは昔に戻ったつもりで、一生懸命皆に喜ばれるよう餅をついています。こういう小さな所から、地域の輪が広がって発展してゆくのではないかと思います。ただ、このふるさと祭りも15年目となり定着しつつありますが、行事の中にも考え直さないといけないところがでてきており、どうしたら良いか相談しながら毎年開催している状態です。でも私たちは、この行事に参加することにより、苦労するほど皆に喜ばれるということが分かってきました。
 次にバザーについてですが、ここでの目玉は、たらいうどんです。これは、前日に男の人によってかまどの上に据え付けられた大きな鍋に水をはり、薪をくべて火をおこし、汗をぬぐいながらゆであげています。このたらいうどんは小田の名物の一つで、冬の長い小田では、お祝い事や家族が亡くなった時などのお客さんをもてなすのに、こたつを囲みながら味わってもらっています。特にだしに特徴があり、その中身はダイズ、シイタケ、イリコ、昆布などを入れ、薬味としてはニラ、ショウガ、ユズ、ゴマなどが使われており、一口食べると忘れられない味です。
 昔、大洲藩のお殿様が小田深山の一軒家で食事をされた時、大きなはんぼ(たらい)にお湯を一杯入れてうどんを泳がせて出したところ、「小田の手打ち」といわれ大変喜ばれました。お殿様は、お城に帰っても、「手打ちじゃ、手打ちじゃ。」と言ってよく食べられたという話もあります。
 次に、カラオケ大会についてです。今までは毎年、特設舞台をつくっていましたが、今年(平成9年)は小田特産のスギをふんだんに使った創作的な舞台を、お宮さんの境内に据えつけました。この舞台は、樹齢30~40年ぐらいのスギの原木を機械で円柱状に加工し舞台の形に寸法を合わせて仕上げた柱材を約5、60本使って、積木のように積み上げてつくった立派なログハウスで、ふるさと祭りに花を咲かせたようでした。そのため、ここで歌いたいという人が大勢あり、人員をしぼるぐらいになりました。普段の時は、ゲートボール場の休憩所として、地域の人々に木のぬくもりを味わってもらっています。
 町外から講演に来られた先生で、「小田は林業の町でしょう。どうして合板を使われるのですか。かっこうが悪くても、無垢(むく)の木を使いなさい。」ということを言われたことがありましたが、小田には、樹木が身近にあり過ぎるので、住んでいる私たちには、そのありがたみが分からないのかもしれません。これからは、木を見直し、林業の町にふさわしい樹木を使って、自然に恵まれた環境を地域の発展に役立てていくべきだと思います。