データベース『えひめの記憶』

えひめの記憶 キーワード検索

わがふるさとと愛媛学Ⅳ ~平成8年度 愛媛学セミナー集録~

◇西条の水環境

 ところで、どうして西条の水がおいしいのでしょうか。これを西条の水環境から見てみたいと思います。

写真7
 これは西条の自噴地帯を示した地図です。上が北で、瀬戸内海の中央部にあたる燧灘(ひうちなだ)に面しています。右(東)は新居浜市、左(西)は周桑郡小松町へと続きます。手前には石鎚山を主峰とする四国の尾根がそびえたっております。JR予讃線と国道11号が平行に走っていますが、その部分がちょうど山裾にひろがる扇状地の端にあたります。
 今から数十万年も前、加茂川・中山川・室川などの河川はこの北に開いた湾の海底に土砂を運びました。その遠浅の上に干拓が行われたわけです。この三つの川の集まりこそ、この地方の被圧地下水の構造をつくり、豊富な水量の涵養(かんよう)に大きく貢献していると私は考えております。

写真8
 今度は逆に海側から山を眺めた図です。仰ぎ見ますと、笹ヶ峰、瓶ヶ森、石鎚山の切り立った山並みがあります。そしてこの山中での年間降水量は2,500mmくらいです。西条市街が年間1,500mmくらいですから、かなり多い量です。さらに、石鎚山は全国七霊山の一つでありまして、千古斧(せんこおの)を入れぬ原生林があり、この森林が、たくさんの水を涵養しているわけです。これが、今治市や松山市と比べて西条市が水に恵まれている理由ではないかと思っております。

写真9
 これは打ち抜き師が、地中に鉄棒を通した時の感触を頭に描いて地下の状態を図に表したものです。中盤(なかばん)と呼ばれる砂利層からも自噴水が得られますが、この水はあまり好まれません。それで、もっと深く掘っていき、定常的にきれいな水が得られる底盤(そこばん)と呼ばれる部分から水を得ます。数層あるうちのどこで打ち止めとするかは、親方の力量であると聞いております。打ち抜きの深度は年々深くなる傾向にあり、現在は30m以上、隣の東予市では5、60mくらいまで掘り下げているようです。